2年連続で1000億円規模の赤字、北海道電力が再稼働か再値上げを求める:電力供給サービス
電力会社10社の中で最も厳しい経営状態にあるのが北海道電力だ。売上高の15%を超える1000億円規模の赤字を2年連続で出している。原子力発電所の停止を赤字の要因に挙げて、早期の再稼働か電気料金の再値上げを訴える。しかし本質的な問題は販売量の低下と設備更新の遅れにある。
北海道電力の2013年度は売上高が前年比5%増の6076億円、経常損失は988億円で前年から198億円の改善に終わった(図1)。回復の傾向が見られるとはいえ、売上高の15%を超える損失を出し続けているのは深刻だ。その要因として、原子力の泊発電所が停止していることによる燃料費の増加を挙げている。
費用の内訳を見てみると、燃料費と他社からの購入電力料の合計で、震災の前後では2000億円の差がある(図2)。ただし燃料費が増えた分の半分以上は「燃料費調整単価」で利用者から徴収しているため、実質的な影響額は1000億円以下になる。2012年度と2013年度で比較すると、燃料費の増加は205億円で、それに対して燃料費調整単価による収入増は126億円あった。増加分の6割以上を利用者から徴収している。
むしろ大きな問題は販売量の低下にある。2013年度は前年度から2%減り、2年連続で減少した。電気料金を値上げしても想定通りに売上高が増えない構造になっている。それにもかかわらず2014年度から再び販売量が増えていくと予測する(図3)。再値上げを実施すれば利用者が節電対策を進めて、さらに販売量が減るのは確実だ。新電力に切り替える企業や自治体も数多く出てくる。
そうした状況にあっても、泊発電所が早期に再稼働できない場合には再度の値上げを検討する方針だ。というのも、2013年に値上げを実施するにあたり、原子力の発電量を震災前よりも増やして、火力の発電量を減らすことを想定していた(図4)。泊発電所の1〜3号機を2013年12月から2014年6月にかけて再稼働する予定だった。
そのために原子力発電所の修繕費と減価償却費で年間に300億円以上の費用が増えることも織り込んでいたが、安全対策に予想以上のコストがかかることが判明して、減価償却費は大幅に増加する見込みだ。原子力は燃料費を安く計上できるものの、それ以外にかかる費用を加えると火力発電よりも高くなることは、いまや周知の事実である。
他の電力会社は発電効率が高いガス火力や燃料費が安い石炭火力の新設・増設を進めて燃料費の削減を図っている。北海道電力にはガス火力による発電所は1カ所もなく、2019年になって初めて運転を開始する。火力発電所の設備更新を怠っていたことが収益の悪化につながっている。
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