石炭火力発電のCO2抑制を、環境省が東京電力の新設計画に要請を出す:電力供給サービス
東京電力が2020年に運転開始を予定している3カ所の石炭火力発電所に対して、環境省は計画段階の意見書を提出した。いずれも最先端の発電技術を採用していることから早期に商用化するようエールを送る一方、ガス火力発電よりも多いCO2排出量を削減するための取り組みを要請した。
大規模な火力発電所を新設する場合には、「環境影響評価」のプロセスを実行することが義務づけられている。東京電力は福島県と茨城県の3カ所に石炭火力発電所を建設する計画を推進中で、環境影響評価の最初の手続きになる「配慮書」を経済産業大臣に5月に提出していた。その内容をもとに環境大臣が7月3日までに意見書を示したことで、開発計画は次のステップに進む。
発電所を新設する場所は福島県で運転中の「勿来(なこそ)発電所」と「広野火力発電所」、茨城県の「常陸那珂(ひたちなか)火力発電所」の構内である(図1)。このうち勿来と広野は「IGCC(Integrated coal Gasification Combined Cycle、石炭ガス化複合発電」と呼ぶ石炭火力で最先端の発電方式を採用して、2020年の東京オリンピックに間に合わせて運転開始を目指している。
石炭火力は石油火力と並んでCO2排出量が最も多い発電方式であるため、環境省はCO2排出量の削減策を実施するように経済産業省と電力業界に要請している。主要な対策は2つあって、第1に発電効率の高い設備へ更新すること、第2にCO2を回収する設備を導入することである。
東京電力が新設する3カ所の石炭火力発電所は第1の対策に合致することから、環境省は商用運転を急ぐように意見書の中で伝えた。計画中のIGCCは出力が50万kW級で発電効率は46%に達する(図2)。旧来の石炭火力は36%程度にとどまるため、IGCCへ移行すれば3割近い改善になる。燃料とCO2排出量の両方を3割近く低減できる見込みだ。
環境省が経済産業省と共同で策定した火力発電の技術ガイドライン「BAT(Best Available Technology、最新鋭の発電技術の商用化及び開発状況)」の最新版には、開発・実証中の段階にある発電設備としてIGCCが加えられている(図3)。さらに建設中の段階にある発電設備には「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」と呼ぶ発電方式が含まれていて、東京電力が常陸那珂に新設する設備で採用する。
3カ所の石炭火力発電所は環境省の方針に合致する性能を発揮する。ただしLNG(液化天然ガス)を燃料に使う火力発電設備と比べれば発電効率は低い。このため環境省は東京電力に対して、LNG火力よりも超過する分のCO2については、海外を含めて削減する取り組みを実施するように通達した。
さらに「2050年までに80%の温室効果ガス排出削減」を目指す国の長期目標に向けて、新設する3カ所の発電所に「CO2回収・貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)」を導入する検討も要請した。一方で環境省は経済産業省と電力業界に対しても、CO2排出量の削減策を業界全体で進めるように求めている。
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