東京電力が今夏の供給力強化を完了、高効率のガス火力が2カ所で全面運転:電力供給サービス
燃料費の削減に向けて火力発電所の増強を急ぐ東京電力が今夏の新設計画を7月末に完了した。最新鋭のガスコンバインドサイクル方式による設備が千葉と鹿島の火力発電所で全面的に営業運転を開始した。発電設備の熱効率は57〜58%に達して、現在の火力発電では最高レベルである。
8月に入って東日本に厳しい猛暑が訪れて、東京電力の管内では電力需要が急激に増え始めた。それでも供給力にはまだ十分な余裕がある。東京電力は8月に最大で5669万kWの供給力を確保できる見込みで、そのうちの約5%は2014年度に入ってから営業運転を開始した最新鋭のガス火力発電設備が供給する。
千葉県にある「千葉火力発電所」と茨城県にある「鹿島火力発電所」の2カ所で、LNG(液化天然ガス)を燃料に使う発電設備6基が相次いで営業運転に入った。千葉火力発電所では7月31日に3号系列の第3軸が試運転から営業運転へ移行して、第1軸〜第3軸すべてが全面稼働した(図1)。
千葉の3号系列はガス火力発電設備では現在の最高レベルにある「MACC(More Advanced Combined Cycle)」方式を採用して、1基あたり50万kWの発電能力を発揮する。火力発電の熱効率(熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる比率)は58%に高まり、標準的な火力発電と比べて約1.5倍になる。
もう一方の鹿島の7号系列はMACCよりも一世代前の「ACC(Advanced Combined Cycle)」方式を採用している(図3)。1基あたり42万kWの発電能力で、熱効率は57%である。MACCではガスタービン発電機の燃焼温度を1500度に高められるのに対して、ACCは1300度までで、そのために熱効率が少し低くなる。
千葉と鹿島で6基が全面運転を開始したことにより、東京電力のガス火力発電設備はACCとMACCによる高効率タイプが合計で36基になった(図3)。いずれも熱効率が54〜58%台と高く、旧来のガス火力と比べて燃料とCO2排出量ともに2〜3割も少なくなる見込みだ。東京電力の収益改善に大きく貢献する。
さらに東京電力は次世代の「MACC II」を採用した最新鋭のガス火力発電設備を神奈川県の「川崎火力発電所」に建設中である(図4)。MACC IIは燃焼温度を1600度まで高めることができて、熱効率は61%に達する。1基で71万kWの発電能力があり、2016年7月と2017年7月に1基ずつ営業運転を開始する計画だ。これに伴って旧式の石油火力発電設備を廃止すれば、燃料費とCO2排出量をさらに削減することができる。
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