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燃料電池が自動車からオフィスまで、2020年代には普及価格へ水素エネルギーの期待と課題(4)(3/3 ページ)

水素で走る燃料電池自動車が増えれば、石油の消費量とCO2の排出量は減る。バスやフォークリフトの実用化も目前だ。一方で電力を供給する燃料電池は家庭用のエネファームが普及するのに続いて、業務用がオフィスや工場へ広がっていく。2020年代には量産効果で水素も燃料電池も安くなる。

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水素とガスを組み合わせれば「トリプル発電」に

 今後は発電事業の用途でも燃料電池の導入が進んでいく。その中でも実現性が高いのは、燃料電池とガス火力発電を組み合わせた「トリプルコンバインドサイクル発電」である。通常のガスタービンと蒸気タービンによるコンバインドサイクルに加えて、ガスタービンの前段に燃料電池を組み込んで3段階で発電することができる(図9)。


図9 燃料電池と火力発電を組み合わせた「トリプルコンバインドサイクル発電」の仕組み。出典:三菱重工業

 3段階の発電効率を合わせると70%に達する。発電効率が高い分だけ燃料が少なくて済み、CO2の排出量も減る。火力発電プラントメーカーの三菱重工業の計画では、出力が数10万kW級のトリプルコンバインドサイクル発電プラントを2020年代に実用化できる見通しだ(図10)。


図10 「トリプルコンバインドサイクル発電」の開発ロードマップ。出典:三菱重工業

 次のステップとしては、水素だけを燃料にして発電する「専焼発電」の期待も大きい。水素を再生可能エネルギーで作ることができれば、燃料を含めてCO2フリーの発電所になる。海外では専焼発電の実証実験が始まっていて、イタリアの電力会社では発電能力が1万2000kWある商用レベルの水素専焼発電プラントを運転中だ。

 水素発電でもコストが課題になる。2011年に政府の委員会がまとめた電源別の予測によると、燃料電池の発電コストは2030年にガスコージェネレーションよりも低くなる。電力1kWhあたりのコストは19円前後になって、発電と同時に排出する熱の利用価値を考慮すると11円台まで下がる(図11)。


図11 コージェネと燃料電池の発電コスト(画像をクリックすると拡大)。出典:コスト等検証委員会

 このコスト予測の中では、火力発電が燃料費の増加で2030年に向けて上昇していく。石炭火力とガス火力は1kWhあたり6円前後が10円台に、石油火力は2030年に38円台まで高騰する。そうなれば燃料電池を使った水素発電の実用性が一段と高まり、化石燃料の低減に拍車がかかる。

連載第5回:「安全性が気になる水素・燃料電池、普及に向けて規制緩和も進む」

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