石炭火力発電所が運転停止、九州で需給率が96%に上昇する可能性も:電力供給サービス
長崎県にある九州電力の火力発電所が1月19日(月)の午後に運転を停止した。発電設備のボイラーへ水を送る装置に不具合が生じたためで、70万kWの電力を供給できなくなった。九州では1月26日からの週に気温の低下が予想され、復旧しない場合には需給率が96%に達する見通しだ。
トラブルが発生したのは九州電力の「松浦発電所」で、石炭を燃料に最大で70万kWの電力を供給することができる(図1)。出力70万kWで運転中の1月19日(月)の午後1時26分に、ボイラーへ水を送るためのろ過装置に不具合が発生して、水の量が一時的に減少したことにより、自動的に運転を停止した。
石炭火力発電設備ではボイラーで発生させた蒸気をタービンに送って発電機を回す(図2)。発電後の蒸気は復水器に回収して、海水などを使って冷却して水に戻してから再びボイラーへ送る仕組みだ。ボイラーの性能を劣化させないように海水をろ過して使う方法が一般的だが、ろ過装置に不具合が生じたために発電設備全体が停止した。
1月20日(火)の時点では原因が不明で、復旧の見通しも明らかになっていない。(注:九州電力は20日の午後11時18分に通常運転に復帰したことを21日に発表した。ろ過器に付属する弁の動作不良が原因だった。)
今冬の九州電力の供給力は最大で1560万kW程度を確保しているために、松浦発電所の70万kWが減っても需給状況に大きな影響は生じていない。ただし九州電力の予想では1月26日(月)からの週に冷え込みが強まって、最高気温は6.7度にとどまる見込みだ。その場合には需要が100万kW以上も増加して、ピーク時の需給率は96%まで上昇する(図3)。
電力会社の需給見通しは保守的に予想することが通例のため、実際の需要はもう少し低く収まる可能性が大きい。それでも別の発電所が同時に運転を停止するような事態になると、停電の危険がある97%を超えるおそれもあり、楽観はできない。
九州電力では1月6日(火)にも「山川地熱発電所」で復水器に異常が発生して、一時的に運転を停止している。こうして発電所のトラブルが相次ぐと、準備中の「川内原子力発電所」の再稼働にも不安が残る。川内原子力発電所は1基で89万kW(2基の合計で178万kW)の供給能力があり、稼働後に運転を停止した場合には松浦発電所よりも需給面の影響は大きい。
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