電力の小売事業者向けITシステム、同時同量の計画管理まで支援:電力供給サービス
電力市場に参入する事業者には多くの業務が発生する。料金計算のほかに契約管理や送配電事業者との連携、さらに需要と供給量を一致させる同時同量の計画管理も求められる。一連の業務を処理するためにはITシステムが不可欠で、小売事業者を対象にした新しいサービスが相次いで始まる。
これまでのところIT(情報技術)を活用した小売事業者向けのシステムでは海外メーカーの製品が主流だ。自由化で先行した欧米の事業者のノウハウを生かしながら、日本市場に合わせたシステムを開発して導入件数を増やしている。対抗する国内ITベンダーの中ではTISが新サービスの「エネLink」を2月23日に開始した。
エネLinkは3種類のメニューで構成する(図1)。中核になる「CIS+」は小売業務の基本になる顧客情報管理や契約管理のほか、検針管理や料金計算の機能を含む。加えて電力会社からの契約変更に必要なスイッチング支援システムとの連携や送配電事業者と連携するための機能も用意した。
小売事業者にとって重要な業務の1つに、顧客に販売する電力と調達する電力の量を一致させる同時同量の管理がある。2016年4月に実施する小売全面自由化に伴って、小売事業者には1時間前の段階で需要と供給の見込みを一致させる「計画値同時同量」が求められる。そのために必要な機能をそろえたメニューが2つ目の「Balance+」である(図2)。
このほかに3つ目のメニューとして、請求データから請求書を印刷して発送処理までを代行する「Print+」がある(図3)。TISは金融機関を対象に大量の請求書発行業務をITシステムで代行するサービスを提供してきた実績があり、そのノウハウを電力の分野にも展開する。
ただし現時点のサービスメニューでは顧客の獲得・維持に必要なCRM(Customer Relationship Management、顧客接点力強化)の機能が提供できていないほか、電力の使用量などを顧客がウェブサイトで照会できるポータル機能が欠けている。スマートメーターのデータを収集・管理する機能を含めて、遅くとも2015年度の前半にリリースする必要がある。
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