再エネの賦課金は2030年に月額886円以下、環境省が独自に試算:法制度・規制
再生可能エネルギーの拡大に伴って「賦課金」の増加が問題視されている。固定価格買取制度で買い取った電力のコストを消費者が負担するもので、2014年度は標準世帯で月に約200円である。環境省が独自に試算した結果、2030年度まで買取制度が続いても最高で886円にとどまる見通しだ。
環境省は再生可能エネルギーの導入を加速する施策を検討するために、2050年までの導入量の見込みや効果・影響などを分析している。2015年に入って導入見込量を見直すとともに、電気料金に影響を与える「賦課金」(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の動向を改めて予測した。
その結果、2050年まで再生可能エネルギーを最大限に拡大させる施策を実行した場合には(高位ケース)、家庭が月に負担する賦課金は2030年のピーク時で886円になる(図1)。この試算は固定価格買取制度が2030年度まで続くことを前提にしている。震災前に資源エネルギー庁が想定していた導入見込量で計算すると(低位ケース)、賦課金は最高でも月額353円にとどまる。
賦課金の単価は2030年のピーク時で1kWhあたり2.95円になる(図2)。2014年度の賦課金単価は0.75円に設定されていることから、最大でも現在の4倍以下である。電気料金に占める賦課金の比率は1割以下に収まることになる。
環境省が賦課金を試算する前提にした再生可能エネルギーの導入量は、2030年の発電電力量に換算して最大で3237億kWhまで拡大する(図3)。2030年の電力需要を2013年度の実績と同等の8500億kWhとして、再生可能エネルギーの比率は38%に達する。
一方で火力発電の比率が大幅に下がるため、電気料金の単価は現在よりも低くなっているはずだ。再生可能エネルギーが長期的に増えていっても、電気料金がさほど高くならない可能性を示唆している。
固定価格買取制度が始まって太陽光発電を中心に導入量が急増したことで、家庭や企業が負担する賦課金の増加が問題視されてきた。経済産業省は再生可能エネルギーを抑制して原子力を拡大する方針で、理由の1つに電気料金の上昇を挙げている。環境省の試算結果は国の原子力政策にも一石を投じる。
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