水力と地熱を中核の電力源に、スマートグリッドで再エネを増やす:エネルギー列島2014年版(46)鹿児島(2/2 ページ)
再生可能エネルギーの導入量に制限がかかった九州にあって、鹿児島県では早くから蓄電池を使って電力の安定化を図るスマートグリッドの実証試験に取り組んできた。天候の影響を受けて出力が変動する太陽光と風力を蓄電池と連携させながら、安定した出力の水力と地熱を拡大していく。
離島と本土に広がるスマートグリッド
地熱と水力は天候の影響を受けずに安定した電力を供給できる利点がある。一方で太陽光と風力は天候によって出力が変動するために、地域の送配電ネットワークを流れる電力を不安定にしてしまう問題がある。九州電力が全国の先頭を切って再生可能エネルギーの発電設備の接続を保留したことは記憶に新しい。
今後も九州の太陽光と風力は制約を受ける。特に問題になるのは離島である。電力の需要が小さいために、太陽光や風力による出力変動の影響が大きく出てしまう。鹿児島県の離島のうち種子島をはじめ5つの島では、新たに再生可能エネルギーの発電設備を接続できない状態になっている。
九州電力は2010年から、蓄電池を使って太陽光や風力の出力変動を抑制する「離島マイクログリッドシステム」の実証試験を8つの島で実施してきた(図5)。それぞれの島に設置した太陽光や風力の発電設備に蓄電池を併設して、火力発電の電力と組み合わせながら需給バランスを制御する試みである。
そのうちの1つ、本土から南西に40キロメートルほど離れた場所にある黒島には、太陽光と風力の両方を組み合わせた実証試験設備がある(図6)。
人口わずか200人あまりの小さな島では、240kWの火力発電所が島内に電力を供給している。実証試験設備には60kWの太陽光と10kWの風力に加えて、容量が322kWhの蓄電池を設置した。火力の電力をベースに、天候による太陽光と風力の出力変動を蓄電池で吸収する。さらに昼間の太陽光の電力を蓄電池に充電して夜間に放電するピークシフトも実施している。
本土でも同じように蓄電池を使って電力を制御する「スマートグリッド実証試験」が2013年に始まった。試験地は2カ所で、そのうちの1つは火力発電所と原子力発電所がある薩摩川内市だ(図7)。市内の中学校の跡地を利用して、離島よりも規模の大きい設備で実証試験に取り組んでいる。
太陽光発電は事業用の250kWのほか、家庭用の4kWのパネル7枚を方位や角度を変えて設置した。蓄電池の容量は事業用が70kWh(出力100kW)で、家庭用が10kWh(同3kW)×6台の構成だ。この実証試験設備と市内の230世帯に設置したスマートメーターを組み合わせて電力の安定化を図る。
今後は「川内原子力発電所」が稼働すると、電力の供給体制は大きく変わる。それによってスマートグリッドの効果がどう変化するかにも注目したいところだが、実証試験は2015年3月に終了してしまう。鹿児島県に国内で最先端のスマートグリッドを構築するためにも、試験期間の延長か早期の再スタートを期待したい。
*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −九州編 Part2−」をダウンロード
2016年版(46)鹿児島:「小水力発電と海流発電が離島に、天候に左右されない電力を増やす」
2015年版(46)鹿児島:「豚の排せつ物からバイオ燃料を、火山の島では地熱発電と水素製造も」
2013年版(46)鹿児島:「南国の離島に豊富な自然エネルギー、火力依存からの脱却を図る」
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