島のエネルギーをCO2フリーに、石油から太陽光・風力・バイオマスへ:エネルギー列島2014年版(47)沖縄(2/2 ページ)
沖縄県では島ごとに石油火力発電に依存する体制が続いてきたが、豊かな自然環境にふさわしい再生可能エネルギーを拡大する動きが活発になっている。人口の少ない本島の北部や離島でもメガソーラーが稼働して地域の電力源を担う。台風に強い可倒式の風力発電も沖縄ならではの取り組みだ。
下水処理場でバイオマス発電が拡大
沖縄県では年間の日射量は意外に少なくて、全国平均を下回る。それに対して年間の平均風速は毎秒6メートルを超える場所が多く、太陽光よりも風力発電が適している。ただし夏には台風が数多く襲来して強風が吹くために、風車を破損させてしまう可能性が大いにある。
そこで離島の風力発電設備には、必要に応じて風車を地面に倒せる「可倒式」が有効だ。沖縄電力が3つの島に合計5基の可倒式風車を設置して、離島の再生可能エネルギーを拡大している。最も新しい可倒式の風力発電設備は沖縄本島から西へ50キロメートルの場所にある粟国島(あぐにじま)で2014年6月に運転を開始した(図4)。
沖縄県では離島を含めて風力発電の導入量が増えてきたが、県内の風力発電所の大半は沖縄電力が運営している。このため固定価格買取制度による風力の導入量はほとんどなく、最近では太陽光のほかにバイオマスが増え始めている(図5)。
特に活発になってきたのが、下水処理場で発生する消化ガスを利用したバイオマス発電だ。沖縄本島では9カ所の下水処理場が地域ごとに下水を処理している(図6)。
このうち処理量が最大の「那覇浄化センター」では1984年から消化ガスによるバイオマス発電を続けてきた。年間の発電量は720万kWhにのぼり、浄化センターで使用する電力の3分の1を自給自足することができる。
新たに「宜野湾(ぎのわん)浄化センター」と「具志川(ぐしかわ)浄化センター」でも消化ガスを利用できる発電設備を導入する計画だ(図7)。2カ所を合わせると年間の発電量は830万kWhになる見込みで、一般家庭の2300世帯分の電力に相当する。それぞれの発電設備は2016年に運転を開始する予定である。
沖縄県は浄化センターの土地を発電事業者に貸し付けて、発電用に消化ガスを売却する。県みずから投資せずに再生可能エネルギーを拡大できるうえに、土地の貸付料と消化ガスの売却収入を得ることができる。消化ガスは生物由来のバイオ燃料であり、CO2排出量の削減にもつながる。
*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −九州編 Part2−」をダウンロード
2016年版(47)沖縄:「台風に負けない風力発電に挑戦、バイオマスで島のCO2を減らす」
2015年版(47)沖縄:「小さな離島で再生可能エネルギー7割へ、台風を避けながら風力発電と太陽光を」
2013年版(47)沖縄:「海洋温度差で未来をひらく、離島の自給率100%へ太陽光と風力も加速」
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下水の処理で発生する消化ガスを使って発電
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