再生可能エネルギーの接続可能量を増やす、大容量の蓄電池を東北と九州に:蓄電・発電機器
2014年度の補正予算で再生可能エネルギーの接続可能量を増やす緊急対策を実施することになり、大容量の蓄電池の導入が2カ所で決まった。福島県にある東北電力の変電所と福岡県にある九州電力の火力発電所だ。出力4〜5万kWの蓄電池が需給バランスを調整して発電量の増加に対応する。
東北電力の「南相馬変電所」と九州電力の「豊前発電所」が蓄電池システムの導入先に選ばれた。2015年度内に営業運転を開始する予定だ。東北・九州ともに太陽光発電設備が急増した結果、すでに送配電ネットワークに接続できる許容量を超えている。太陽光や風力で発電した電力を蓄電池に充電することにより、各地域の接続可能量を増やすことが可能になる。
蓄電池を導入する東北電力の南相馬変電所は同じ南相馬市にある「原町火力発電所」に接続する主要な変電所である(図1)。変電所の構内に出力が4万kW(キロワット)のリチウムイオン電池を設置する計画だ。蓄電容量は4万kWh(キロワット時)にのぼる。一般家庭の使用量(1日あたり10kWh)に換算して4000世帯分の電力を貯蔵することができる。
東北電力の本店にある中央給電指令所から、火力発電所や揚水式の水力発電所の出力と合わせて蓄電池を遠隔で制御する仕組みだ(図2)。周辺地域の太陽光や風力による発電量が需要を上回る状況になると、変電所の蓄電池に充電して需給バランスを調整する。この方法で太陽光や風力の接続可能量を5万kWくらい増やせる見込みである。
現在のところ東北電力の管内では、太陽光発電の接続可能量は552万kW、風力発電は200万kWに決められている。南相馬変電所に蓄電池を導入することで、わずかだが接続可能量が増える。増加分は政府の方針により、福島県内の発電事業者に優先的に割り当てる。
すでに東北電力は宮城県の仙台市にある「西仙台変電所」に大容量の蓄電池を設置済みで、2月20日に営業運転を開始している(図3)。蓄電容量は西相馬変電所の半分に相当する2万kWhである。東北電力は接続可能量の増加見込みを明らかにしていないが、2〜3万kW程度は増やせる可能性がある。
九州電力が豊前発電所に設置する蓄電池の容量はさらに大きい。出力は5万kWで、蓄電容量は30万kWhを想定している(図4)。南相馬変電所の蓄電池と比べて7.5倍の容量がある。最低でも接続可能量を5万kW以上は増やせる見通しだ。
現時点で九州電力が設定している太陽光発電の接続可能量は817万kWで、全国では最大ながら、早くも申込量が上回っている(図5)。原子力発電所の運転停止が決まって接続可能量は増える見込みで、蓄電池の導入で追加が期待できる。今のところ九州電力は接続可能量の見通しを修正していないが、国家予算を使って蓄電池を導入する以上は早急に修正値を公表すべきである。
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