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太陽光エネルギーを水素で貯蔵、変換効率15.3%を達成:自然エネルギー(3/3 ページ)
理研は、太陽光エネルギーから水の電気分解により水素を製造し貯蔵するシステムを開発。シンプルな構造で安価なシステムを実現し、エネルギー変換効率15.3%を達成したという。
シリコン太陽電池の変換効率が課題に
当初はシリコン太陽電池と電気化学セルを使うことを検討したが4個直列にした場合でもエネルギー変換効率は6.1%であり、変換効率が低いということが明らかになったという。そこで、フレネルレンズを用いて太陽の位置に合わせて効率よく集光できるタンデム型太陽電池を使用することにし、エネルギー変換効率12.2%という結果を得ることができたという(図5)。
しかし、太陽電池の最大出力点である最大出力電圧2.12V、最大出力電流95.9mA(ミリアンペア)と電気化学セルの動作点である動作電圧1.55V、動作電流99.3mAの間の差は大きく、ロスが大きい状態だった。そこで最終的に、タンデム型太陽電池を2個直列、電気化学セルを3個直列に並べることで太陽電池の最大出力電圧と電気化学セルの動作電圧が近づくようにし、15.3%という高いエネルギー効率を実現することに成功したという(図6)。
今回開発したシステムは構成要素の性能が向上すれば全体性能が直接向上する試作機だ。ただ、今後の実用化に向けては、太陽電池や電気化学セルというシステムの中核部分だけでなく、水素貯蔵法や周辺部分の最適化などが課題になるとしている。
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