風力発電の設置数が2000基を突破、発電能力300万kWに迫る:自然エネルギー
過去3年間は伸び悩んでいた国内の風力発電がようやく拡大してきた。NEDOが最新の導入状況を調査した結果、2014年度に102基の風力発電設備が運転を開始して、国内の設置総数が2000基を超えた。発電能力は合計で294万kWに達して、原子力発電所3基分に相当する電力源になる。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は全国の電力会社10社と発電事業者のJ-POWER(電源開発)から聞き取り調査を実施して、毎年度の風力発電の導入量を集計している。対象は1基あたりの出力が10kW(キロワット)以上で、電力会社の送配電ネットワークに接続している風力発電設備である。
2014年度は102基が新たに運転を開始した。年間に100基以上の風力発電設備が運転を開始したのは、2010年度の148基を最後に4年ぶりのことだ。直近の2011〜2013年度は3年間の合計でも103基しか増えていない。これまでに国内で設置された風力発電設備の総数は廃止・撤去したものを除いて2034基に達した(図1)。
発電能力は2014年度に23万kW増えて、合計293万kWに拡大した。風力発電の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)を20%として計算すると、年間の発電量は51億kWh(キロワット時)になる。4月末に資源エネルギー庁が発表した2030年のエネルギーミックス(電源構成)の案では、風力発電の年間発電量を182億kWhと見込んでいる(図2)。それと比べると、まだ3割弱の水準だ。
最近の数年間に風力発電が伸び悩んだ要因の1つは、出力7500kW以上の風力発電所が2012年10月から環境影響評価の対象に加えられたことにある。風力発電は鳥などの生息に影響を与えるほか、騒音によって人体に健康被害をもたらす可能性があり、大規模な風力発電設備を建設するにあたっては環境影響評価が欠かせない。
環境影響評価を完了するまでには通常2〜3年程度かかる、2012年度に環境影響評価の手続きを開始した風力発電設備の一部が2014年度になって運転を開始するようになった。当面は固定価格買取制度の効果も期待できるため、今後さらに導入量の増加ペースが加速する可能性は大きい。
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