1年間で3倍になった「新電力」、電力販売実績があるのはわずか1割:電力供給サービス
帝国データバンクは「新電力会社(特定規模電気事業者、PPS)」の実態調査を実施。2016年4月の電力小売り自由化に向けて1年間で約3倍と登録者数が急増する「新電力」がどのような企業なのかを調べた。
2012年7月の再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)や、2016年4月に予定されている電力小売り完全自由化などを背景に、特定規模電気事業者への登録が相次いでいる。2014年4月25日時点での登録は206社だったのに対し、2015年5月21日時点での登録は663社まで増加しており、1年間で登録事業者数は3倍以上に急増している状況だ。
急速に拡大する事業者数だが、これらの事業者はどういう企業体なのだろうか。帝国データバンクでは、同社のデータベースである企業概要ファイル「COSMOS2」などを活用し、これらの事業者の実態調査を行った。
ベンチャー企業が数多く参入
調査によると、都道府県別で最も登録事業者数が多いのが「東京都」で219社、構成比33.5%となっている。次いで「愛知県」(44社、構成比6.7%)、「大阪府」(41社、同6.3%)、「福岡県」(32社、同4.9%)、「北海道」(30社、同4.6%)が続いている(図1)。全国的に参入が広がっており、「宮城県」と「島根県」を除く45都道府県で参入事業者があることが特徴だ。
これらの企業のうち、設立時期が確認された650社を見てみると、東日本大震災以降に新設された企業が非常に多いことが分かる。特定規模電気事業者への登録企業の内、2012年に設立された企業が55社、2013年が45社、2014年が58社となっている。また、2015年に設立された企業も28社となっており、設立後間もないベンチャー企業が多く参入していることが明らかとなっている。
参入事業者は卸売業と建設業が多い
業種別に見ると、「卸売業」(139社、構成比21.3%)がトップとなり、次いで「建設業」(97社、同14.8%)、「小売業」(85社、同13.0%)となっている。このうち、電気事業者以外の業種を見ると、「電気機械器具卸売」(54社、同8.3%)、「家庭用機械器具小売」(35社、同5.4%)、「石油卸」(27社、同4.1%)、「電気工事」(26社、同4.0%)、「燃料小売」(24社、同3.7%)などが上位を占めている。
一方でこれらの企業の年間売上高では、「1億円以上10億円未満」(141社、構成比21.6%)が構成要素としてはトップとなった。全体的には10億円以上の企業が約4割を占めている。一方で、設立から日が浅く営業実績がないケースや事業実態が判然としないケースなどを含む「未詳」が209社(構成比32.0%)となっており、全体の3割強となっている。実際に電力小売りビジネスを行える運用能力があるかどうかについては、今後の課題になるものと見られている。
新電力間での淘汰が進行
現行制度では、経済産業省・資源エネルギー庁に「特定規模電気事業者」の届け出をすることで参入でき、2015年5月21日時点の新電力会社数は、前年比3倍以上となる663社まで急増している。しかし、登録社数が増加した一方で、2015年3月時点で「特定規模電気事業者」として電力販売実績がある企業は71社にとどまっており(資源エネルギー庁調べ)、届け出を行った企業の大半は登録したものの新電力会社として稼働していない。
さらに、2016年4月の電力小売り事業の全面自由化と同時に「特定規模電気事業者」への届け出制度が廃止され、「小売電気事業者」の登録がないと電力小売り事業へ参入できなくなる。今後は2015年後半から事前登録が開始される見込みの「小売電気事業者」にシフトする流れが進むとみられる。このため「新電力会社としてのライセンスを獲得できない企業の淘汰が始まる可能性がある」(同社)としている。
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