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福島第一原発から22キロの工場、1万枚の太陽光パネルで720世帯分の電力自然エネルギー

携帯電話などに使われる電子回路基板の製造工場にメガソーラーが完成した。福島第一原子力発電所から22キロメートルの場所にある工場で、事故から3カ月以上に及ぶ操業停止を余儀なくされた。敷地内に残っていた遊休地を利用して、地域の再生可能エネルギーの拡大に貢献する。

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図1 「福島工場」と原子力発電所の位置。出典:メイコー

 神奈川県に本社がある電子回路基板メーカーのメイコーが、「福島工場」の中にメガソーラーを建設して6月10日に運転を開始した。電子機器に欠かせないプリント基板を製造する主力工場の1つだが、2011年3月の東日本大震災では甚大な被害を受けて操業停止に追い込まれた。

 福島工場は太平洋に面した広野町の工業団地の中にある。事故を起こした東京電力の「福島第一原子力発電所」から22キロメートルの距離で、放射能汚染によって一時は避難指示が出た区域だ(図1)。7月1日に操業を再開できたが、3カ月以上に及ぶ生産停止に対して東京電力から7億4300万円の賠償金が支払われている。

 この賠償金とほぼ同額にあたる7億2000万円をメガソーラーの建設に投じた。工場を増設するために確保してあった4万平方メートルの土地が震災後は遊休地のまま残っていた。そのうちの約4分の3を利用してメガソーラーを完成させた(図2)。設置した太陽光パネルの数は9772枚にのぼる。


図2 「メイコーソーラーパーク福島」の全景。出典:メイコー

 発電能力は2.5MW(メガワット)で、年間の発電量は260万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して720世帯分に相当する。広野町の総世帯数(約2000世帯)の3分の1以上をカバーする電力源になる。広野町が復興計画の基本方針に掲げている再生可能エネルギーの拡大にも貢献する。発電した電力は全量を売電する予定だ。

 福島県では被災した沿岸地域を先端技術で再生する「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」を2014年1月から推進している。テーマの1つがエネルギー関連産業を集積することで、太陽光発電や洋上風力、最先端の石炭火力発電にも取り組む(図3)。広野町には東京電力の「広野火力発電所」があり、「IGCC(石炭ガス化複合発電)」と呼ぶ新しい方式の火力発電設備を建設する計画が進んでいる。


図3 福島県の沿岸地域に集まるエネルギー関連産業。出典:福島県復興推進本部

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