「オゾン層」と「地球温暖化」、地球を守る2つの基準で進むフロン類の規制:法制度・規制(3/3 ページ)
フロン類の排出規制が広がりを見せている。世界的な規制強化の動きに合わせて日本でも2015年4月から「フロン排出抑制法」が施行。幅広い用途で利用されている冷媒の在り方に注目が集まっている。
HFCの次の冷媒
国内ではフロン排出抑制法の施行により、地球温暖化およびオゾン層破壊に影響を及ぼすフロン類の排出は削減傾向に進む。しかし、世界的に見て、温室効果ガスへの規制は強まる傾向にある。2030年に全廃されるHCFCと同様に、HFCにもより強い規制が掛かる可能性がある。今後の冷媒は「オゾン層を破壊しない」ことと「温室効果が低い」という両方を満たすことが条件になると想定される。
そこで、これらの条件を満たし、さらに冷媒としての能力を持つ新たな冷媒「新冷媒」の研究・開発が注目されている。
新冷媒の候補としては、HFC32やHFO(ハイドロフルオロオレフィン)などが検討されている他、アンモニアやプロパン、CO2など、自然界に存在する物質で冷媒としての特性を持つ「自然冷媒」などの活用が期待されている(図5)。
ただ、これらの新たな冷媒候補にもそれぞれ一長一短がある。
新たな冷媒には、オゾン層を破壊せず、地球温暖化係数が低い他、当然冷媒としてのパフォーマンスや安全性などの条件が求められている。しかしこれらの要件がそれぞれトレードオフの関係になっており、どちらかを満たせばどれかを満たせないという状態になっているのだ。例えば、新冷媒として期待されているHFOは、オゾン層の破壊効果がなく地球温暖化係数も低い。その一方で、微燃性であることに加え冷媒としてのパフォーマンスを発揮するには高圧力が必要なため、家庭用エアコンに利用するのは難しいという。
環境省などでは、新冷媒の活用が広がるように、実証実験などを推進し、環境負荷の少ない冷媒の普及に力を注ぐとしている(関連記事)。これらのそれぞれの要件を満たし、さらに使用する機器のニーズに合った新冷媒の開発に冷媒および機器各社は力を注いでいるところだ。
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