小売電気事業者の登録が8月3日に始まる、営業に関するガイドライン強化へ:動き出す電力システム改革(36)
小売全面自由化の実施に先立って、電力会社も新電力も「小売電気事業者」としての登録が必要になる。8月3日に事前登録の受付が始まり、2016年1月から需要家と契約変更の手続きを進めることができる。政府は契約時の説明義務などを規定したガイドラインを強化する予定だ。
第35回:「再生可能エネルギーの電力でも、CO2フリーではないと説明?」
いよいよ小売全面自由化まで残り9カ月を切り、事業者の動きが活発になってきた。実施までに大きな節目が2つある。1つは8月3日に始まる「小売電気事業者」の事前登録だ(図1)。もう1つの節目は年が明けて1月になると、小売電気事業者が家庭を含めて一般の需要家から契約変更の申し込みを受け付けられるようになる。
事前登録を済ませた小売電気事業者は即座に営業活動を開始できることから、政府は営業行為や契約締結に関するガイドラインを拡充して需要家を保護する。小売営業に関する主なガイドラインは5種類になる予定で、「説明義務等のガイドライン」が加わる(図2)。契約時に必要な説明や書面の内容と方法を具体的に規定するものである。
既存のガイドラインも改正して、情報公開や適正取引の実施を徹底する方針だ。電気料金の算定方法や標準メニューの公表を義務づけるほか、契約解除のルールなどをガイドラインで明確にする。違反した場合には業務改善命令の対象になり、従わないと業務停止や登録取り消しの処分を受けることもある。
小売全面自由化によって代理販売が増えることも予想される。例えば電話会社が電力と電話をセットにして割安な料金メニューで販売するケースだ。このような場合には電話会社が小売電気事業者に登録していなくても、電力の供給契約を需要家と小売電気事業者が締結する形をとれば問題ない(図3)。ただし需要家に対する説明義務などは、代理販売でも同様にガイドラインの対象になる。
代理販売の会社が需要家と電力の供給契約を結ぶことは認められない(図4)。実際に需要家に対して電力を直接供給できる体制ができている場合でも、小売電気事業者でなければ需要家と供給契約を締結することは禁じられる。こうした点もガイドラインで規定する。
家庭向けの小売では、マンションなどを対象にした「高圧一括受電モデル」であれば、現在でも自由化の対象になっているため電力会社でなくても取り扱うことが可能である。政府は小売全面自由化に合わせて、高圧一括受電の場合でも各家庭に対する説明義務をガイドラインに盛り込む考えだ(図5)。
このほかに小売全面自由化で想定される販売形態の1つに「需要家代理モデル」がある。アグリゲータと呼ぶ代理事業者が需要家に代わって小売電気事業者と料金交渉を進めて、割安な価格で電力を購入できるようにするサービスだ。アグリゲータに対しても同様の説明義務をガイドラインで規定することになる。
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