第3世代は水素も生かす、3段階で発電するトリプルコンバインド:火力発電の最新技術を学ぶ(4)(2/2 ページ)
水素を使って発電できる燃料電池が火力発電と合体する。10年後の2025年に実用化を目指す第3世代の火力発電は、ガスタービン・蒸気タービン・燃料電池の3種類を組み合わせたトリプルコンバインドサイクルが特徴だ。CO2の排出量は現在の第1世代と比べて2〜3割も減少する。
IGFCはCO2分離・回収にもつながる
もう一方の石炭を燃料に使うIGFCでも仕組みは同様だ。第2世代のIGCCでは石炭からガスを精製して、ガスタービンと蒸気タービンの2段階で発電する。第3世代のIGFCになると、精製したガスを燃料電池に取り込んで発電した後にガスタービンで発電する構造に変わる(図5)。
現在のところIGFCには課題がいくつかある。その1つは石炭から精製したガスに含まれる塩素などの物質が燃料電池に悪影響を与える可能性があることだ。そうした物質を効率的に除去する必要がある。
J-POWER(電源開発)が1995年から20年間かけて取り組んだ石炭ガス化の実証プロジェクト「EAGLE」の中で、燃料電池用のガス精製技術を開発している。このプロジェクトでは、石炭をガス化してガスタービンで発電する技術のほかに、発電に伴って排出するCO2を分離・回収する技術についても実証設備で検証した(図6)。
さらにEAGLEの成果を受け継いで、次世代の石炭火力発電プロジェクト「大崎クールジェン」が2012年から始まっている。J-POWERが中国電力と共同で、広島県の「大崎発電所」の構内に実証設備を建設中だ。このプロジェクトでは3段階に分けて、最先端の石炭火力発電の技術を実証する計画になっている(図7)。
第1段階は石炭ガス化によるIGCCの実証設備を建設して、第2段階ではCO2を分離・回収してIGCCで再利用する。そして第3段階で燃料電池を組み合わせたトリプルコンバインドサイクルのIGFCの実証に取り組む。2021年までにIGFCの実証設備を完成させて試験を開始する予定だ。政府のロードマップでは2025年をめどにIGFCの技術を確立して実用化に入る。
関連記事
- 進化を続ける火力発電、燃料電池を内蔵して発電効率60%超に
2030年代に向けて火力発電の仕組みが大きく変わる。国を挙げて取り組む次世代の火力発電は燃料電池を内蔵する複合発電(コンバインドサイクル)がガス・石炭ともに主流になっていく。2030年代には発電効率が60%を超える見通しで、CO2排出量も現在と比べて2〜3割は少なくなる。 - 発電効率が80%を超える燃料電池、水素イオンで実現へ
現在の燃料電池の発電効率は60%程度が最高水準だが、それをはるかに上回る“超高効率”の燃料電池の原理を東京ガスと九州大学が共同で開発した。発電に必要なイオンの移動物質を従来の酸素から水素に置き換えて、多段階で化学反応を起こすことにより、電力の発生効率が大幅に向上する。 - 燃料電池が自動車からオフィスまで、2020年代には普及価格へ
水素で走る燃料電池自動車が増えれば、石油の消費量とCO2の排出量は減る。バスやフォークリフトの実用化も目前だ。一方で電力を供給する燃料電池は家庭用のエネファームが普及するのに続いて、業務用がオフィスや工場へ広がっていく。2020年代には量産効果で水素も燃料電池も安くなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.