洋上風力発電が北海道の港に、2020年に100MWで運転開始へ:自然エネルギー
北海道で初めての洋上風力発電プロジェクトが動き出した。日本海側にある石狩湾新港の沖合に100MW級の発電設備を建設する計画だ。陸地から2キロメートルほど離れた500万平方メートルが対象になる。民間企業6社による連合体が事業者に決まり、2020年の春に運転開始を目指す。
「石狩湾新港」は札幌市の中心部から約15キロメートルの至近距離にあって、北海道の経済を支える重要港湾の1つである(図1)。
2014年12月に「石狩湾新港長期構想」を策定して、食料とエネルギーの供給拠点として発展させるプロジェクトを推進中だ。エネルギー分野では洋上風力発電を重点施策に掲げて、このほど公募を通じて事業者を決定した(図2)。
全国各地で風力発電所の建設を進めるグリーンパワーインベストメントを中核に、オリックス、鹿島建設、新日鉄住金エンジニアリング、住友電気工業、古河電気工業を加えた有力企業6社による連合体が洋上風力発電事業を実施する。総事業費は約630億円を見込んでいて、発電規模は100MW(メガワット)を想定している。
これから環境影響評価の手続きを進めて、2年後の2017年の夏に工事を開始する計画だ。運転開始は2020年の春を予定している。洋上風力発電所を建設する区域は石狩湾新港の沖合に横に長く伸びる「北防波堤」の外側で、約500万平方メートルが対象になる(図3)。
陸地から近くて水深が浅いため、発電設備を海底に固定する着床式で建設することが可能だ。最新の洋上風力発電用の風車は1基で5MWの発電能力があることから、合計で20基程度を設置する見通しである。
北海道の沿岸部は日本の近海の中でも風況に恵まれている(図4)。特に日本海側は年間の平均風速が8メートル/秒を超える場所が多く、石狩湾新港の沖合でも平均8メートル/秒の強い風が年間を通じて吹く。洋上風力発電の標準的な設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は30%だが、平均風速が8メートル/秒になると40%に上昇する。
発電能力が100MWの場合には、設備利用率が30%で年間の発電量は2.6億kWh(キロワット時)、40%では3.5億kWhに増える。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると7万〜10万世帯分の電力を供給することができる。石狩市の総世帯数(2万7000世帯)の3倍に匹敵する。
ただし建設工事を開始するにあたっては環境影響評価の手続きに加えて、地元の漁業協同組合の同意を得ることが欠かせない。現在までのところ漁業協同組合は操業の安全確保などを条件に同意する姿勢だ。このほかに地域住民の一部から反対意見が出ているため、計画どおりに着工できない可能性もある。
石狩湾新港には北海道ガスのLNG(液化天然ガス)基地があり、隣接地には北海道電力が初めてのLNG火力発電所を建設している。沖合に大規模な洋上風力発電所が加わることによって、火力と風力を中心にエネルギーの一大拠点を形成する構想だ(図5)。さらに余剰電力で水素を製造して、タンカーで全国各地に液化水素を輸送することも可能になる。北海道のエネルギー産業が石狩湾新港から新たなフェーズへ移行していく。
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