富士山と共存できる発電所を増やす、風力や地熱で観光と環境教育:エネルギー列島2015年版(22)静岡(3/3 ページ)
静岡県の再生可能エネルギーは世界文化遺産の富士山と共存することが重要だ。景観を損ねる発電設備の建設を排除する自治体も出てきた。その一方では環境にやさしいエネルギーとして風力や地熱を観光や教育に利用する町がある。太陽光や水力を含めて豊富な資源の活用法を模索する試みは続く。
発電所の設計段階から富士山に配慮
富士山の南側に広がる富士市では、浄化センターに太陽光発電を導入するプロジェクトを進めている。市内に2カ所ある浄化センターの屋根を事業者に貸し出して再生可能エネルギーを拡大する手法を採用した(図8)。
2カ所を合わせて9000枚の太陽光パネルを屋上に設置して2.2MWの発電能力になる。屋上であれば富士山の景観に影響を及ぼす可能性は小さい。合計で600世帯分の電力を供給できて、災害時には浄化センターの非常用電源になる。メガソーラーを設置した建物は地域の津波避難ビルに指定されているため、太陽光で電力を供給できれば災害対策にも生かせる。
静岡県の再生可能エネルギーは太平洋沿岸を中心に、豊富な日射量と水量を生かして太陽光と小水力発電の導入が活発に進んできた(図9)。最近では風力やバイオマスも増え始め、今後は伊豆半島などで地熱の利用拡大が期待できる。
バイオマスでも富士山のふもとに新しい発電設備が2015年4月から運転を開始した。富士山の東側に広がる御殿場市と小山町が共同で運営する「富士山エコパーク焼却センター」である(図10)。地域で発生する可燃ごみを焼却するための設備で、焼却の熱を利用して2.5MWの電力を供給することができる。発電した電力は施設内で消費したうえで余剰分は売電する。
建設した場所は富士山から15キロメートルほどの距離にあるため、計画段階から周辺の景観を重視して設計に取り組んだ。周囲に緑地を配置したほか、富士山と調和のとれる色彩や形状を採用した。静岡県の発電設備は場所によって建屋のデザインにも配慮が必要になる。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −北陸・中部編 Part2−」をダウンロード
2016年版(22)静岡:「農業用水路に小水力発電が広がり、太陽光とバイオガスで作物を育てる」
2014年版(22)静岡:「ふじのくにを潤す農業用水、米と野菜と電力も作る」
2013年版(22)静岡:「太平洋沿岸で風力発電を一気に加速、2020年の再エネ率を12%以上に」
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