宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機を支えた蓄電池:蓄電・発電機器
宇宙ステーション補給機「こうのとり」は5号機は2015年8月19日に種子島宇宙センターからH-IIBロケットにより打ち上げられ、国際宇宙ステーションへの補給を無事に行い任務を終えた。その動力を支えたのは、GSユアサグループの蓄電池だった。
GSユアサグループのジーエス・ユアサ テクノロジーは、同社の高性能リチウムイオン電池が三菱重工業および宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げたH-IIBロケット5号機と、同ロケットに搭載された宇宙ステーション補給機「こうのとり」5号機(HTV)に採用されていたことを明らかにした(図1)。
H-IIBロケット用電池は、同ロケットの制御系機器などに電力を供給した(図2)。
HTVに搭載された電池は「こうのとり」が単独飛行中の太陽の光が当たらない時間帯に、リチウムイオン電池が「こうのとり」の各システムの稼働に必要な電力を供給する働きがあった。同電池の主な仕様はLMG100の公称電圧が3.7V(ボルト)、容量100Ah(アンペア時)、サイズが130×50×216mm(ミリメートル)、質量2800g(グラム)。LMG200は3.7V、200Ah、165×50×271mm、4550g(図3)。
「こうのとり」5号機は2015年8月19日に種子島宇宙センターからH-IIBロケットにより打ち上げられた。その後、順調に軌道を航行し、国際宇宙ステーション(ISS)へ接近。所定の位置に停止しISSのロボットアームにより、8月25日にISSへの結合に無事成功。ISSに約35日間係留し、その間全ての船外、船内貨物のISSへの移送および、ISSの不用物資と役割の終えた実験装置を回収し、9月30日に大気圏に再突入し物資輸送の任務を完遂している。
ジーエス・ユアサテクノロジー製のリチウムイオン電池は「宇宙の厳しい環境下でも高性能を発揮し、その技術の信頼性の高さが評価された」(同社)ため、国際宇宙ステーションへ補給物資を運ぶための輸送機であるHTVの初号機から、HTVの電気モジュールを担当する三菱電機に採用されているという。同社は特殊用途の電池や電源を開発・製造販売しており、海・陸・空(水深6500mの深海から、上空3万6000kmの宇宙空間まで)の特殊環境で、高性能かつ高品質なパフォーマンスを発揮する電池を提供している。今後も高性能リチウムイオン電池の開発・製造を通じて、宇宙開発事業へ貢献していく方針を示している。
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