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国内初の地熱発電所を52年ぶりに更新へ、2種類の蒸気で出力2000kWアップ自然エネルギー(2/2 ページ)

運転開始から48年を経過した九州電力の地熱発電所で設備更新の計画が進んでいる。現在は地下からくみ上げた高圧の蒸気で発電する方式だが、新設備では同時に湧き出る熱水から低圧の蒸気を作り出して併用する。発電能力は2000kW、年間の発電量は4400世帯分も増える見込みだ。

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高効率の「ダブルフラッシュ方式」を採用

 新たに導入する設備には「ダブルフラッシュ方式」を採用して発電能力を引き上げる。地熱発電では地下深くまで生産井(せいさんせい)を掘削して高圧の蒸気をくみ上げるが、蒸気と同時に高温の熱水も噴出する。既設の発電設備は地下からくみ上げた高圧の蒸気だけでタービンを回転させる「シングルフラッシュ方式」を採用している。

 シングルフラッシュ方式では熱水は発電に利用できないが、ダブルフラッシュ方式では熱水を減圧して低圧の蒸気を発生させることが可能だ。この低圧の蒸気もタービンに送り込んで発電に利用することにより、高圧の蒸気だけを利用する場合よりも発電能力が高くなる(図3)。九州電力は八丁原発電所にダブルフラッシュ方式の発電設備を導入した実績がある。


図3 大岳発電所に導入するダブルフラッシュ方式の地熱発電設備。高圧の一次蒸気と低圧の二次蒸気を組み合わせて発電能力を高める(画像をクリックすると拡大)。出典:九州電力

 大岳発電所の設備更新にあたっては、地下から蒸気と熱水をくみ上げる生産井は従来のまま使い続ける。同様に発電後の熱水を地下に戻すための還元井(かんげんせい)も変更しない。地熱資源の使用量を変えずに、発電効率を高めて発電量を増やすため、環境に対する影響は従来と変わらない想定だ。

 発電所が立地する九重町は大分県と熊本県にまたがる「阿蘇くじゅう国立公園」に入る(図4)。大岳発電所は国立公園の第3種特別地域に含まれていて、発電所の新設や設備更新は可能だが、景観や動植物に対する影響の低減を厳しく求められる。九州電力は10月29日に経済産業大臣と関係自治体の首長に提出した準備書の中で、低騒音・低振動型の機器を採用するなど、環境に対する影響を軽減する対策を掲げている。


図4 大岳発電所が立地する大分県の九重町。出典:九州電力
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