100キロ離れた場所から燃焼を管理、ごみ焼却発電プラントの遠隔操炉に成功:蓄電・発電機器
ごみ焼却プラントなどの大型設備は24時間の監視体制で運転する場合が多い。さらに設備寿命の観点からも最適にゴミの燃焼を調整する必要があるなど、高い運転技術が求められる。日立造船はごみ焼却発電プラントのこうした運転を、1カ月間遠隔システムで行うことに成功した。
日立造船はこのほど兵庫県佐用町にある「にしはりまクリーンセンター」で、同社が開発したごみ焼却発電プラントの遠隔操炉システムを利用し、約1カ月間の運転実証に成功したという(図1)。
ごみ焼却発電プラントは、含水率やカロリーなどの性状が一定でないごみを燃焼するため、数人の運転員が中央制御室で運転状況を24時間モニタリングしながら、燃焼状態に合わせた運転を行っている。近年のごみ焼却プラントは発電設備を備えることも多く、設備の高度化・複雑化に加え、施設寿命を延ばすための最適な運転状態の維持など、高度な運転技術が求められている。
そこで日立造船は「remon(レモン)」「maron(マロン)」「CoSMoS(コスモス)」などの遠隔監視や運転支援に関する技術の開発を行い、各プラントの運転支援を実施している。レモンシステムはゴミ焼却施設の運転状況を同社の遠隔監視センターが遠隔監視し、設計検証や経年変化の確認、運転アドバイス、トラブル発生時の技術支援を行うためのシステムだ。
マロンシステムは施設内の全域をカバーする無線LAN網を介して、現場の任意の場所に設置した仮設カメラを通じてリアルタイム監視を行う。コスモスは学習機能を持った燃焼画像認識システムだ。遠隔操炉システムは、これら各技術の運用効果を最大化するために開発したもので、大阪府大阪市にある日立造船の本社ビル内の遠隔監視・運転支援センターから、ごみ焼却発電プラントの燃焼調整を遠隔操作するシステムだ(図2)。
日立造船の本社から、直線距離で約100キロメートル離れた場所に位置するにしはりまクリーンセンターでの実証実験は、同社の遠隔監視・運転支援センターおよび同センターの中央制御室に遠隔操炉システムを設置。2015年9月1〜31日の約1カ月間、運転支援スタッフが24時間体制で本社から操作を行った。この結果、プラントの安全運転および適切な燃焼調整が行えたことを確認したという。
今後同社では、国内および海外のごみ焼却発電プラントに同システムを導入し、運転支援を行うとともに運転員の運転技術の向上に向けた教育を行う計画。将来的には東南アジアなどのごみ焼却発電プラントでも同システムを展開する方針だ。
今回実証実験を行ったにしはりまクリーンセンターは2013年に完成。熱回収施設の規模は1日当たり89トン。発電能力は870kW(キロワットだ)。
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