買うより再利用へ、エプソンが描くオフィスの紙の将来像:省エネ機器(3/3 ページ)
環境への配慮から企業でも紙資源を節約する動きが進んでいる。そんな中で“紙を使う”プリンタ製品を手掛けてきたセイコーエプソンが、“紙を再生する”「世界初」(同社)の製品「PaperLab」を開発して話題となった。開発機を初めて一般公開した「エコプロダクツ2015」の同社ブースで、その実力を取材した。
エコだけでなく機密情報の保護にもメリット
PaperLabのようなオフィス向けの製紙機は他社も製品化している。ただし、水を利用する湿式だ。水を使用せずに製紙が行えるメリットとしては、もちろん資源としての水を節約できることに加え、上水装置などが不要になるため装置全体小型化できる点にある。オフィスのバックヤードなどにも設置しやすい。
さらにDFTではシュレッダーとは違い、紙を繊維まで分解するため機密文書や個人情報も完全に抹消できる。こうした社内文書などは、外部業者に処理を委託する場合が多い。しかしPaperLabを導入すればその際に懸念される情報漏えいリスクや、文書の運送に掛かるエネルギーの低減にもつながる。機密度の高い情報を扱う企業にとっては、文書の保管スペースの設置費用も削減できるなど、自社内で資料を処分できるメリットは多いだろう。既にエプソン社内でも利用を開始しているという。
エプソンではこうのように単にエコという観点だけでなく、実際の需要も見込んだ戦略商品としてPaperLabの開発を進めた。今後は自治体や大企業などに実証導入して、2016年中の実用化を目指す。価格については「類似する製品が少なく、エプソンとしても価格感がつかめていない状況。目標としてはPaperLabで紙1枚の再生に掛かる費用が、新しい紙を買うよりも安くなるというように、全体でコストメリットがある価格を実現したいと考えている」(エプソン)としている。
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