小さい落差と少ない水量でも発電できる、農業用水路で80世帯分の電力に:自然エネルギー(2/2 ページ)
岩手県の北部を流れる農業用水路で4月に新しい小水力発電所が運転を開始する予定だ。用水路の途中にある落差を利用して、最大37kWの電力を供給することができる。太陽光発電や地熱発電で実績のある民間の事業者が県から水利権の使用許可を受けて再生可能エネルギーの導入に取り組む。
建設費を抑えて採算性を向上
洸陽電機は八幡平市の導入事例をモデルケースにして、地域と連携した「地域貢献型水力開発」を各地に展開していく。小水力発電の開発に必要な事前調査から建設工事と稼働後の維持管理までを地元と共同で推進する。さらに発電設備と土木設備の建設費を抑えることにより、小水力発電で課題になる採算性を向上させて導入事例を拡大する計画だ。
すでに洸陽電機は太陽光発電と地熱発電を実施している。地熱発電所は兵庫県と長崎県にある。長崎県の小浜(おばま)温泉では100度の温泉水を利用したバイナリー方式の発電所を運転中だ(図4)。地元の温泉事業者が建設した発電設備を引き取り、設備を改修して事業化にこぎつけた。バイナリー方式は100度前後の低温の熱でも発電することができる。
太陽光発電では大阪府の東大阪市で府有地を活用したメガソーラーを建設・運転している。川の洪水対策のために設けられた治水緑地の中に、2MW(メガワット)の太陽光発電設備を導入した(図5)。大阪府の公募を通じて実施したプロジェクトで、敷地内には移動式の蓄電池を備えて、災害時に周辺の避難所などに電力を供給することができる。
もともと洸陽電機はエネルギー管理システムの事業から開始して、最近では再生可能エネルギーを利用した発電設備の建設・運営に注力している。2015年11月には小売電気事業者にも登録した。2016年4月から家庭向けに電力を販売する計画で、JAL(日本航空)と提携して顧客獲得に乗り出す。洸陽電機から電力を購入した家庭には、電気料金の支払いに伴って「JALマイレージバンク」のマイルを付与する(図6)。
ただし現時点ではマイル数の換算レートのほか、料金プランや供給エリアなどの詳細は発表していない。家庭向けに再生可能エネルギーで発電した電力を加えたプランを提供する可能性もある。
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