地熱発電でトップを独走、太陽光やバイオマスを加えて自給率5割へ:エネルギー列島2015年版(44)大分(3/3 ページ)
大分県の地熱発電が活発に続いている。大規模な発電所の周辺では低温の地熱を利用したバイナリー発電所が拡大中だ。地熱を使って温度や湿度を制御できる農業ハウスの実証事業も始まった。工業地帯ではメガソーラーやバイオマス発電所が動き出し、県内のエネルギー自給率を上昇させる。
臨海工業地帯にメガソーラーとバイオマス発電所
地熱発電の導入量で大分県は全国1位を走り続けてきた。固定価格買取制度の対象に認定された発電設備だけでも1万kWを超えて、第2位の熊本県の4倍以上にのぼる。さらに太陽光発電が10位、バイオマス発電も6位に入る規模に拡大中だ(図9)
製造業を除いた県内のエネルギー消費量のうち、再生可能エネルギーと天然ガスコージェネレーションを合わせた「エコエネルギー」の比率は2014年度に33%に達した。今後も太陽光発電を中心に導入量を拡大して、2024年度にはエコエネルギーによる自給率を51%まで高める目標を掲げている。
太陽光発電では九州で最大の「大分ソーラーパワー」(発電能力82MW)を筆頭に、大規模なメガソーラーが臨海工業地帯で続々と運転を開始した(図10)。同じ臨海工業地帯にある三井造船の所有地では、45MWの大規模なメガソーラーが2016年3月に稼働する予定だ。
バイオマス発電所の建設プロジェクトも進んでいる。南部の佐伯市(さいきし)にある太平洋セメントの工場では、新電力のイ―レックスが発電能力50MWの木質バイオマス発電所を建設中だ(図11)。港に面した臨海工業地帯の立地を生かして、東南アジアからパームヤシ殻を輸入して燃料に利用する。2016年の秋に運転開始を予定している。
さらに再生可能エネルギーで発電した電力を地域内に供給する取り組みも始まる。電子機器メーカーのデンケンを中核に設立した「新電力おおいた」が大分県内で電力の小売を開始する計画だ。
すでに2016年1月から佐伯市内の公共施設や家庭を対象に、BEMS/HEMS(ビル/家庭向けエネルギー管理システム)を設置して実証実験に入った(図12)。4月には自治体と企業向けに電力の小売を開始して、10月から家庭・商店向けにもHEMSを活用した電力の供給サービスを開始する。
販売する電力には地域のメガソーラーを最大限に活用する方針だ。すでに県内の3カ所のメガソーラーと供給契約を結んだ。今後は水力・地熱・バイオマスで発電した電力も買い取って供給量を増やす予定だ。大分県では地熱を中心に太陽光からバイオマスまで導入量が増加するのに合わせて、エネルギーの地産地消がますます活発になっていく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −九州編 Part2 −」をダウンロード
2016年版(44)大分:「資源に影響を与えない地熱発電所、日本一の温泉県で動き出す」
2014年版(44)大分:「おんせん県は地熱発電だけじゃない、山と海からバイオマスと太陽光」
2013年版(44)大分:「火山地帯で増え続ける地熱発電、別府湾岸には巨大メガソーラー群」
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