屋内で木質バイオマス発電、秋田のスギで電力と熱を地産地消:自然エネルギー(2/2 ページ)
秋田県の北秋田市で新しいスタイルの木質バイオマス発電が始まる。屋内に設置できるフィンランド製の小型ユニットを道の駅に設置して、電力と熱を自給自足する試みだ。木質チップを燃焼させて生成するガスで発電する。発電能力は40kWで、同時に20〜100kW相当の熱を供給できる。
1台で87世帯分の電力を供給
Volter 40の内部には木質チップを燃焼してガスを発生させる装置のほか、ガスエンジン発電機や熱回収装置などを収容している(図3)。自動運転の機能を備えていて、ユニットの側面にあるコントロールパネルのほかに、インターネット経由で遠隔から操作することも可能だ。
図3 「Volter 40」の内部構成。右上部のパイプから燃料の木質チップを投入、円筒形の炉の内部で燃焼してガスを発生させる。中央の装置でガスを冷却しながら不純物を除去した後、左側のガスエンジンで発電する。発電後のガスは空気と混ぜて排出、熱や灰は回収してパイプで送り出す。出典:Volter
発電能力は40kW(キロワット)で、1年間に7800時間(24時間運転で325日)まで稼働させることができる。年間の発電量は最大で31万2000kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算すると87世帯分に相当する。
さらに回収した熱から85度の温水を作ると電力に換算して100kW相当、空調に利用する場合には20kW相当のエネルギーになる。電力と熱を合わせたエネルギー効率は78%に達して、都市ガスを利用する一般的なコージェネレーション(熱電併給)システムと同等の水準だ。
燃料に使う木質チップは6.3センチメートル以下の大きさのもので、水分量は15%以下に抑える必要がある。1時間あたり38キログラム(年間に320トン)の木質チップを消費する。北秋田市では間伐材や林地残材などが年間に2700トンも発生している。この全量を使うと、8台のVolter 40をフル稼働させることができる。
すでに国内1号機を市内の「道の駅たかのす」に設置することが決まっている(図4)。道の駅で消費する電力と熱を供給する計画で、地域の木質バイオマス資源を使ってエネルギーを地産地消する取り組みになる。さらにVolter Japanの本社工場にも2号機を設置して、北秋田市を拠点に全国各地に導入事例を拡大していく構想だ。
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