再生可能エネルギー導入量を5万kW拡大、南相馬市で大型蓄電システムが稼働:蓄電・発電機器
東北電力が「南相馬変電所」(福島県南相馬市)に設置を進めていた蓄電池システムが、営業運転を開始した。容量4万kWhの大規模な蓄電池システムで、出力が不安定な再生可能エネルギーの余剰電力の吸収などに活用する。今後検証を進める計画で、再生可能エネルギーの導入量拡大効果を約5万kW程度拡大できる見込みだ。
東北電力が「南相馬変電所」(福島県南相馬市)に導入した蓄電池システムは、設置面積8500平方メートル、出力4万kW(キロワット)、容量4万kWh(キロワット時)の大規模なシステムだ。2016年2月28日から営業運転を開始した(図1)。
このシステムは新エネルギー導入促進協議会が公募した「大容量蓄電システム需給バランス改善実証事業」の採択を受け、2015年5月から設置工事を進めていた。設置の目的は再生可能エネルギーの導入量拡大に伴う系統電力の安定化だ。
東北電力管内では風力と太陽光を中心に再生可能エネルギーの導入量が拡大している。一方、再生可能エネルギーは気象条件で出力が変動するため、送配電ネットワークを流れる電力の周波数が不安定になる可能性も高まる。
そこで再生可能エネルギーによる電力供給が需要を上回ると想定された場合は、蓄電池システムで余剰電力を吸収する。逆に需要が高まる時間帯には蓄電池から放電する仕組みだ(図2)。2015〜2016年度にかけて、将来最も余剰電力が発生すると想定される昼間の時間帯に蓄電池へ充電し、電力需要が高まる夕方に放電するといった運用を行っていく計画だ。東北電力ではこうした実証実験を約1年程度行い、再生可能エネルギーの導入拡大効果を検証していく計画で、想定では導入量を約5万kW程度拡大できる見込みとしている。
南相馬市変電所が位置する福島県は、再生可能エネルギーの推進を復興の大きな柱と位置付けている。今回の蓄電池システムによって再生可能エネルギーの接続可能量が拡大した場合は、福島県の避難解除区域などにおける太陽光発電事業者に優先的に割り当てる方針だ。
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