再生可能エネルギーの電力を大容量の蓄電池に、火力発電所で3万世帯分を調整:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
九州電力は福岡県で運転中の火力発電所の構内に世界最大級の蓄電システムを導入した。太陽光発電など再生可能エネルギーの電力が増加した時に需給バランスを調整する目的だ。1日あたり3万世帯分の電力を蓄えることができる。2016年度末まで実証試験を続けて利用効果を検証する。
春の需要が少ない時期に導入効果
九州電力が蓄電システムを使って取り組む実証試験のテーマは主に4つある。最も重要なテーマは電力の需給バランスを安定化させることだ。九州電力の管内では春の電力需要が少ない時期になると、昼間に太陽光発電の電力が大量に余って需給バランスを不安定にさせる問題が生じる。この余剰電力を蓄電システムに充電して夜間に放電する方法で需給バランスを調整する(図3)。
太陽光や風力発電では天候によって出力が変動するため、送配電ネットワークを流れる電力の電圧や周波数が影響を受ける場合もある。蓄電システムを使って電圧制御と周波数調整に取り組むことが第2・第3の実証テーマになる。さらに第4のテーマとして蓄電システムの効率的な運用方法についても検証する予定だ。
豊前発電所に導入した蓄電システムは三菱電機が構築した。日本ガイシ製のコンテナ型NAS電池を2段に積んで設置スペースを削減している(図4)。合計4台のNAS電池コンテナで構成したブロックを63カ所に配置した。全体の設置スペースは1万4000平方メートル(140メートル×100メートル)である。
これまで九州電力は佐賀県の玄海町と鹿児島県の薩摩川内市で、容量の小さいリチウムイオン電池を使って需給バランスを調整する実証試験を続けてきた。さらに長崎県の対馬や鹿児島県の種子島などの離島でも、容量の大きいリチウムイオン電池を導入して同様の実証に取り組んでいる。
ただし蓄電池に充電できる容量は対馬の1430kWhが最大で、需給バランスを調整できる範囲は限られていた。豊前発電所の蓄電システムは200倍以上の容量になるため、調整できる電力量は格段に大きい。国内では北海道電力と東北電力が国の実証事業の一環で大容量の蓄電システムを変電所に導入している(図5)。
北海道電力は南部の安平町(あびらちょう)にある「南早来(みなみはやきた)変電所」に、レドックスフローと呼ぶ大容量の蓄電池を設置して2015年12月に実証試験を開始した。蓄電池の容量は6万kWhで、豊前発電所の5分の1である。東北電力は仙台市の「西仙台変電所」に容量2万kWhのリチウムイオン電池を設置して、2015年2月に営業運転を開始している。
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