浮体式の洋上風力4基目が福島沖へ、発電能力5MWで年内に運転開始:自然エネルギー(2/2 ページ)
福島沖で進む世界初の浮体式による洋上風力発電プロジェクトの実証設備が2016年内に完成する見通しになった。最後の4基目になる発電能力5MWの「ふくしま浜風」の浮体部分の組み立てが終わり、7月から現地で設置作業に入る予定だ。直径126メートルの大型風車が洋上から電力を供給する。
風車は揺れにくいダウンウィンド型
浮体式の建築物では細長い円筒形の「スパー」を利用するケースが多く、長崎県の五島沖で運転中の洋上風力発電所でもスパー型の浮体を使っている。これに対して「アドバンストスパー」は円筒と六角形の構造を組み合わせたもので、通常のスパーと比べて揺れを抑える効果が期待できる(図4)。変電設備の「ふくしま絆」も同様のアドバンストスパーで運転中だ。
これから福島沖で設置工事が始まる「ふくしま浜風」の浮体部分は高さが59メートルあって、そのうちの33メートルが水中に入る(図5)。水中に沈む部分から6本の係留チェーンを海底まで垂らして設置場所を固定する方式だ。浮体を安定させる六角形の構造物は幅が51メートルもある。
浮体に搭載する風車は支柱(タワー)の上に設置して、発電機を内蔵した中心部分(ハブ)が水面から86メートルの高さになる。3枚ある羽根(ブレード)の回転直径は126メートルに及び、最高到達点は水面から150メートルに達する。
すでに運転中の発電能力7MWの「ふくしま新風」は回転直径が167メートルで、最高到達点は189メートルである。それと比べると「ふくしま浜風」の風車の可動範囲は8割以内に収まる。
発電能力が5MWの風車は日立製作所が製造する「ダウンウィンド型」を採用することが決まっている(図6)。ダウンウィンド型は風車の後方から風を受けて羽根が回転する方式だ。上向きに吹く風が多い場所ではダウンウィンド型が適している。
山の斜面に風車を設置する場合のほか、洋上でもダウンウィンド型のほうが揺れにくい利点がある。福島沖で最初に運転を開始した2MWの「ふくしま未来」でもダウンウィンド型の風車を採用している。
関連記事
- 超大型の洋上風力が福島沖へ、直径167メートルの風車で12月に発電開始
福島県の沖合20キロメートルの洋上に、浮体式で世界最大の風力発電設備が12月に運転を開始する見通しになった。直径が167メートルある超大型の風車を搭載して、発電能力は1基で7MWに達する。組立作業を完了した小名浜港から現地へ向けて、来週6月30日に曳航作業を開始する予定だ。 - 日本で初めて浮体式の洋上風力発電所が営業運転、離島に1700世帯分の電力
長崎県の五島列島の沖合で実証を続けていた日本初の浮体式による洋上風力発電所が営業運転に入った。五島列島で最も大きい福江島の沖合に設置場所を移して、5キロメートルの海底ケーブルを通じて島に電力を供給する。発電能力は2MWで、年間の発電量は1700世帯分を見込んでいる。 - 洋上風力発電が近海に広がる、着床式で全国15カ所へ
風況に恵まれた北海道と東北の近海を中心に、大規模な洋上風力発電所の建設プロジェクトが続々と始まった。陸上よりも風が強く、風車の設置面積を広くとれるため、規模の大きい風力発電所を展開しやすい。水深の浅い場所に建設できる着床式の発電設備が全国各地の沖合に広がっていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.