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地熱資源の開発で26地域に補助金、北海道・東北を中心にプロジェクトが広がる:自然エネルギー(2/2 ページ)
政府が2013年度から続けている地熱資源の開発を促進する補助金制度が4年目に入った。2016年度の1次公募では全国の26地域が補助金の対象に選ばれて、地熱発電に向けた調査や発電後の熱水利用を進めていく。地熱を生かした野菜の栽培やエビの養殖プロジェクトの検討も始まる。
ピーマンの栽培やエビの養殖にも地熱を
東北から選ばれた9件の中では、岩手県が最も多くて3件、青森県と秋田県が2県ずつ、宮城県と福島県が1件ずつ含まれている(図5)。岩手県では「松川地熱発電所」がある八幡平市(はちまんたいし)で2件が選ばれた。地熱を活用した農作物のブランド化と生産者の拡大を通じて、若者の定住を図ると同時に他地域からの移住者を増やす狙いだ。
八幡平市でも1980年代から地熱の温水を利用したハウス栽培を実施している。最近では地元の企業組合がコンビニエンスストア大手のローソンと共同でピーマンの実験栽培に取り組み、収穫したピーマンをローソンの店舗で販売できるようになった(図6)。ただしビニールハウスの中には使われていないものもあるため、補助金を活用して普及策を推進していく。
福島県では古くからの名湯である福島市の「土湯(つちゆ)温泉」が補助金の交付対象になった。土湯温泉では源泉から湧き出る蒸気と熱水を利用した地熱発電所が2015年11月に運転を開始している(図7)。発電に使った後の熱水をエビの養殖施設や融雪設備に利用することを検討中で、地域住民の理解を得るために補助金を使う。発電所と合わせて地熱を生かした町づくりで地方創生のモデル地域を目指す。
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