ごみ発電にビッグデータとAIを生かす、遠隔地から発電量を自動で調整:エネルギー管理
全国各地のごみ焼却施設にバイオマス発電設備が拡大中だ。ごみ発電設備の建設・運転を支援するJFEエンジニアリングは、遠隔地のセンターから発電状況を監視・操作するサービスを提供する。ビッグデータやAIなどの最新技術を駆使して、発電量の自動調整やトラブルの事前検知を可能にした。
JFEエンジニアリングはごみ焼却施設の発電設備を対象にした遠隔監視・操作サービスの「JFEハイパーリモート」の機能を強化した。現時点で5カ所の施設にサービスを提供中で、2018年度までに10カ所以上に拡大する計画だ。神奈川県の横浜市にあるJFEエンジニアリング本社内のリモートサービスセンターから、24時間体制で各施設を集中的に監視・操作する(図1)。
新たに加えた遠隔監視・操作機能は2つある。1つは曜日や時間帯によって発電量を自動的に調整できる機能で、電力の需要が高まる時期に合わせて発電量を増やすことができる。もう1つは過去の運転状況や警報履歴などのデータを蓄積して、現在の運転状況と比較しながらトラブルを事前に検知・抑制する機能である。
発電量の自動調整機能は事前に設定した数値に合わせて運転状態を制御する。電気料金の高い日中の発電量を増やして、電気料金の安い夜間の発電量を減らすことで、同じ分量のごみを使って売電収入を増やす狙いだ(図2)。
JFEエンジニアリングは2016年2月から3カ月間にわたって実際の発電設備に適用した結果をもとに、自動調整機能が有効に働くことを確認した。各地のごみ焼却施設で発電した電力に対しては、JFEエンジニアリングの100%子会社であるアーバンエナジーを通じて販売できる体制も整備した(図3)。
もう1つのトラブル検知・抑制機能には、IT(情報技術)の分野で注目を集めるビッグデータ解析を導入した。過去の運転状況を蓄積した膨大な量のデータをコンピュータで解析して、発電設備ごとに「最適運転モデル」を作成する。そのモデルとリアルタイムに計測する運転状況のデータを比較することで、いち早く異常を検知・抑制する仕組みだ。
さらに今後は現場の運転ノウハウやメンテナンス情報などをデータベースに集約して、運転状況のビッグデータと組み合わせて利用できる機能を追加する。2種類のデータベースをもとにAI(人工知能)のメカニズムを使って推論を展開しながら、自動運転やメンテナンスの最適解を得ることができる(図4)。
AIは1980年代に世界各国で開発・導入が進み、日本国内では大規模なプラントの設計やメンテナンスなどに使われた。熟練した技術者のノウハウを分析して、コンピュータで処理できるデータベースと推論エンジンの組み合わせに置き換える手法である。最近では自動運転の掃除機やロボットにもAIの機能が組み込まれている。
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