アンモニア水素ステーション実現へ、アンモニアからFCV用水素製造に成功:自然エネルギー(2/2 ページ)
広島大学、昭和電工、産業技術総合研究所、豊田自動織機、大陽日酸は、アンモニアから燃料電池自動車用高純度水素を製造する技術の共同開発に成功した
具体的な研究開発の内容
具体的な開発の内容は以下の通りである。
産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センターでは、汎用のステンレス材料の使用が期待される550度以下において、アンモニアを化学平衡濃度(理論値)まで分解する世界トップレベルの高性能ルテニウム系触媒(Ru/MgO)を開発した。550度の環境において、従来のルテニウム系触媒では残存アンモニア濃度が約7万ppmだったが、今回開発したルテニウム系触媒では1000ppm以下までアンモニアを分解できることを発見した(図3)。
昭和電工と豊田自動織機では、この触媒を用いたアンモニア分解装置を実証システムの10分の1スケールで開発した(図4)。アンモニアガスを1Nm3/hの流量でアンモニア分解装置に供給し、550度でアンモニア濃度1000ppm以下の分解ガス(水素75%、窒素25%)が2Nm3/hの流量で得られることを証明した。
広島大学 先進機能物質研究センターでは、加熱再生が容易で、0.1ppm以下の濃度までアンモニアを除去できる無機系除去材料を世界に先駆けて見つけた(図5)。従来の硫酸水素アンモニウム(NH4HSO4)系除去材料を用いた場合、体積当たりのアンモニア除去量が少なく、可熱再生が困難であったものが、今回開発した無機系除去材料を利用することにより、除去量を3倍に増加。加熱再生も可能になった。これにより、無機系除去材料は繰り返し利用できることも分かった。
大陽日酸では、窒素などの不純物を除去する水素精製装置を開発した(図6)。アンモニアを除去した水素、窒素の混合ガスには高濃度の窒素や微量不純物が含まれる。このガスを2Nm3/hの流量で水素精製装置に送り、窒素を1ppm以下まで、その他不純物もppm(100万分の1単位)からppb(10億分の1単位)まで同時に一段で除去する技術を確立。世界で初めてアンモニア由来水素からFCV用水素燃料の国際規格をクリアする水素が製造できる事を明らかにした。
現在、アンモニア水素ステーションチームでは、昭和電工 川崎事業所において10Nm3/hスケールのシステム実証を行うべく、プロセス検討を行っている。今回の成功は、アンモニアをFCV用水素燃料へ利用するための技術の大きな進展であり、将来アンモニアを利用するFCV用水素ステーションの実現につながることが期待されている。
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