農地を太陽光発電で再生、能登半島に新たなエネルギーの風が吹く:エネルギー列島2016年版(19)石川(3/3 ページ)
石川県の能登半島では農作物の栽培に使われなくなった耕作放棄地の増加が課題になっている。放棄地を集積・整備して農業と太陽光発電で再生させる新たなモデル事業が始まった。冬の寒さが厳しい半島にメガソーラーが広がり、風力発電や木質バイオマス発電のプロジェクトも動き出した。
木質バイオマスで電力と水素を地産地消
石川県内で固定価格買取制度の認定を受けた発電設備は太陽光に次いで風力が多く、すでに全国で第8位の規模になった(図8)。珠洲市と輪島市を中心とする能登半島の北側に大規模な風力発電所が集まっている。
その中で最も新しく運転を開始したのは「能登の風 宝来風力発電所」である。輪島市の南に隣接する志賀町(しかまち)で2015年3月に稼働した(図9)。日本海に近い丘陵に4基の大型風車を設置して、合計で7.5MWの発電能力がある。すぐ南側にも6基の風車が稼働中で、合わせて10基が日本海からの風を受けて電力を生み出す。
輪島市ではバイオマス発電の新しいプロジェクトも始まった。地域の間伐材などを燃料に利用する木質バイオマス発電所を建設中だ。市や地元の建設会社などが出資して2016年内の運転開始を目指している。燃料の木材は県森林組合連合会が1日あたり130トンを供給する体制でバックアップする。
この発電所の特徴は木質バイオマスをガス化する設備を導入する点にある。バイオマス専門プラントメーカーのジャパンブルーエナジーが開発した「ブルーIGP(Innovative Gasification Plant)」を採用する(図10)。
図10 「ブルーIGP(Innovative Gasification Plant)」の全景(左)、発電・水素製造の仕組み(右)。HC:Heat Carrier(熱媒体)。出典:ジャパンブルーエナジー
ブルーIGPはプラントの内部を高温に加熱した熱媒体が循環する方式で、熱媒体がバイオマスと反応してメタンガスや水素を発生させる仕組みになっている。メタンガスを使って発電するのと同時に、水素を回収して燃料電池車などで利用できる。
メタンガスによる発電能力は3MWになって、一般家庭の3000世帯分に相当する電力を供給できる見込みだ。発電した電力は固定価格買取制度で売電する。さらに木質バイオマスから作ったCO2(二酸化炭素)フリーの水素を地域内で供給することも計画している。
2015年版(19)石川:「地域を守る砂防ダムに小水力発電を、木材と下水はバイオマス発電に」
2014年版(19)石川:「農村の再生は太陽光でスマートアグリ、砂防ダムに小水力発電を」
2013年版(19)石川:「日本海へ延びる長い半島に、風と水と森から電力を」
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