需要家にWebで情報を提供するメリット、ポータルは導線の作り方が重要:電力自由化で勝者になるための条件(15)
顧客管理の機能の1つとして、需要家向けの情報をタイムリーに提供する仕組みが重要になる。Webを利用したポータルを構築して、情報を提供しながら新規の顧客獲得を目指す事業者は多い。ポータルからの申し込みを増やすためには、需要家にわかりやすい導線を用意する必要がある。
連載第14回:「収入管理の業務コストは大きい、口座振替やコンビニ収納の仕組みを用意」
需要家に対してWebサイトで情報を提供するポータル(入口)の機能には、下記のようなものが求められる。
- 契約情報参照
- 請求金額参照(法人の場合には領収書の発行も)
- 使用値参照(過去の実績も必要、特に高圧の場合には30分単位で必要)
- 申込処理(スイッチング、再点、廃止・撤去、アンペア変更、需要家情報変更)
- 問い合わせ
- お知らせ機能
実際のところWebからの申し込みを増やそうとしている事業者は少なくない。魅力のあるサービスを提供すれば需要家を獲得しやくなるため、各種の機能を備えたポータルを作ることは有効である。ただし新規の顧客がポータルで申し込むに至るまでの導線をうまく作る必要がある。
本来はポータルで簡易的に料金のシミュレーションを実行して、そのまま申込フォームに入力してもらう方法がベストな導線である。とはいえポータルで最初から申し込んでもらえることを期待するのは現実的ではない。その前にコールセンターなどに問い合わせるケースが多くなることも十分に想定できる。
既存の電力会社が使用量を見える化するサービスをポータルで提供しているが、一部の需要家にしか使われていないのが実情だ。携帯電話などにメールで使用量と料金を通知するサービスがあれば、わざわざポータルにログインして情報を確認するほどのインセンティブは働きにくい。
ポータルが有効に機能するのは、毎月の請求金額と料金計算の元となる使用値を需要家に詳しく知らせる場合である。請求書を郵送するには1件あたり100円以上のコストが追加で必要となり、そのコストと手間を省けるメリットは大きい。
Webだけで顧客の獲得と維持を目指す事業者にとって、ポータルは最も重要な仕組みになる。十分なコストと時間をかけて構築するのは当然である。一方でWebを顧客獲得・維持の1つの手段として利用する事業者ならば、なるべくコストをかけずに最低限の業務に絞り込むべきである。
連載第16回:「小売業務の効率を左右するシステム連携、工夫次第でコストを抑制できる」
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