小売業務の効率を左右するシステム連携、工夫次第でコストを抑制できる:電力自由化で勝者になるための条件(16)
電力の小売事業では社内外のシステムと連携を図って、業務を効率的に実行する必要がある。自動でシステムを連携させるケースもあれば、人手を介して連携する方法も考えられる。社内の既存事業とも関連してくるため、各方面の関係者と早めに検討を進めて仕組みを構築することが重要になる。
連載第15回:「需要家にWebで情報を提供するメリット、ポータルは導線の作り方が重要」
小売電気事業者がシステムを導入するにあたって、通常は既存事業との連携が必要となる。以下のような既存のシステムと連携させることを検討しなくてはならない。
1.収入管理システム(請求システムや収納代行業者のシステムとも連携が必要)
2.会計システム
3.分析系システム(販売・収益分析で利用)
4.営業支援システム(高圧の需要家の案件管理などで利用)
5.Webシステム(集客系サイトとの連携)
6.需給管理システム(契約サマリー情報などの連携)
上記のシステム連携を実施する方法は、必要に応じて顧客管理システムからデータのファイルを出力して、日次・月次あるいは順次で連携する仕組みを構築するのが通常である。自動連携も必要だが、人手による運用を含めてコストを考慮しながら、どのような仕組みを構築するかを決めていく。さまざまなステークホルダーとの調整が必要になるため、早めに業務の中身を詰めておくことが望ましい。
外部のシステムと連携する場合には、汎用的なファイル出力の仕組みを構築したうえで、システム連携用のデータ加工処理を実行するなどの工夫を検討したい。そうすることでIT(情報技術)ベンダーに支払うコストを抑制できる。
顧客管理の業務は自社の顧客財産を守り、スピード感をもって戦略を実行するために欠かせないものである。ただし将来の環境変化が予想される電力事業の特性を考えると、当初はITにかけるコストとオペレーションのコストを最小限に抑えるべきで、創意工夫しながら業務を組み立てることが重要である。
次回は電力の小売に新規参入する事業者にとってハードルが高い需給管理の業務について解説する。
連載第17回:「小売電気事業者に欠かせない需給管理の業務、外部委託も有効な選択肢」
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