廃棄物発電の運転をAIが助ける、JFEが遠隔監視センターに導入:エネルギー管理
JFEエンジニアリングは横浜市の遠隔監視センターに最新のAI(人工知能)技術を導入して、廃棄物発電施設の運転状況を最適化する。ベテランの運転員のノウハウをデータに変換して蓄積しながら、発電施設のセンサーが収集した温度やガスの成分をもとに異常を素早く検知して対策を伝える。
発電施設にAI(人工知能)を導入する動きが活発になってきた。全国各地で廃棄物発電施設の建設や運転・保守を手がけるJFEエンジニアリングは発電施設の遠隔操業にAIを適用する。横浜市の本社内にある「リモートサービスセンター」に、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)のAI技術を集約したコグニティブテクノロジー(認知技術)の導入を決めた(図1)。
IBMのコグニティブテクノロジーはチェスや将棋で人間並みの能力を発揮することで知られる「ワトソン(Watson)」に使われている技術である。特徴は大きく2つある。1つは人間が発する自然言語を文字・音声・画像のままデータで蓄積して、その内容を分析しながら知識に体系化できる。この知識はコンピュータが活用しやすい構造のデータになっていて、次々に入ってくる新しいデータをもとに知識を向上させることが可能だ。
廃棄物発電施設に適用する場合には、運転マニュアルに加えてベテランの運転員による運転ノウハウを音声や画像で蓄積する。さらに日々の運転日報や運転データなども知識(学習データベース)に反映させることができる(図2)。一方で発電施設の内部に取り付けた各種のセンサーから発熱量や温度、ガスの成分などを収集して、大量のデータで構成するセンサーデータベースを作り上げる仕組みだ。
リモートサービスセンターのオペレータはディスプレイの画面を見て気になる兆候を見つけたら、AIに理由を尋ねる。この時もオペレータはキーボードから文字を入力する方法だけではなくて、AIのシステムに音声で伝えることも可能だ。離れた場所でタブレット端末を使ってコミュニケーションをとることもできる。
質問を受けたAIは学習データベースとセンサーデータベースを組み合わせて、発電施設が通常と違う状態にあることを認識すると、その原因と対策を教えてくれる。こうして学習データベースを活用しながら、人間に代わって適切な判断を下せる点がワトソンの2つ目の特徴である。もしオペレータが異常に気づかなくても、AIがセンサーのデータをもとに自動的に判断して、発電施設の運転状態を適切に制御できる。
JFEエンジニアリングはリモートサービスセンターの遠隔監視・操作システムにIBMのAIを導入して有効性を検証する。有効性を確認できたら、2017年度中に廃棄物発電施設を対象にAIを活用した遠隔操業支援を試験的に開始する予定だ。
リモートサービスセンターでは全国5カ所の廃棄物発電施設を遠隔で監視・操作している。各施設の発電量を自動的に調整しながら、グループ会社のアーバンエナジーを通じて電気料金の高い昼間に発電量を増やすサービスも実施中だ(図3)。2018年度までに対象の発電施設を10カ所に拡大する計画で、AIの導入による最適な操業と自動化を通じて顧客を拡大していく。
廃棄物発電施設の建設や運転・保守の分野では、日立造船も遠隔監視サービスに力を入れている(図4)。このサービスにも大量のデータを処理して運転状態を最適に維持する技術を導入する計画で、日本IBMと共同で新しいシステムを開発している。ただしIBMのAI技術ではなく、「PAO」と呼ぶ設備の異常検知・予知保全システムを組み合わせる。
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