沖縄にスマートシティを開発、コージェネや再エネでCO2を20%以上削減:電力供給サービス(2/2 ページ)
沖縄本島の南部を走るモノレールの延伸計画に合わせて、新設する駅の周辺地区にスマートシティを開発する。都市ガスと温泉に含まれる天然ガスを使って電力と熱を供給するほか、太陽光・風力や廃棄物発電の電力も併用する予定だ。石油火力発電が主体の沖縄県でCO2排出量の削減に取り組む。
エネルギーの半分以上を自家発電で
エネルギーセンターの中核設備として、都市ガスで稼働する大型のコージェネレーション4台を導入する。1台の発電能力は1000kW(キロワット)で、合計4000kWの電力を供給できる(図5)。さらにコージェネの排熱を回収して冷熱・温熱を供給する装置や、温泉ガスを燃料に使える小型のコージェネを導入する。温泉ガスを生成するためにくみ上げた温泉水はスポーツ施設などに供給することも可能だ。
開発地区の中には住友商事が商業複合施設を開業するほか、大和ハウス工業が分譲マンションを建設する計画がある。浦添市が各社の計画をもとに電力や熱の需要をまとめたところ、年間のエネルギー需要は電力に換算して3390万kWh(キロワット時)、ピーク時には9200〜9300kWを必要とする(図6)。
この需要に対してピーク時の半分弱を従来通り沖縄電力から購入して、残りはガスコージェネを中心に地区内の発電設備で供給する方針だ。夜間の電力を蓄電池に充電しながら昼間に放電してピーク時の電力に生かす(図7)。エネルギーセンターに導入する管理システムが需要と発電量の予測に基づいて、コージェネや蓄電池を制御して需給バランスを最適化する。
沖縄電力が運転する発電所は石油火力が大半を占めるため、電力の消費に伴うCO2の排出量は国内の他の地域よりも多い。開発地区内で利用する電力の半分以上を自家発電設備から供給することによって、各施設を運営する事業者はCO2排出量を従来と比べて平均で26%も削減できる見通しだ(図8)。これは国が公約した2030年のCO2削減目標(2013年比)と同じ水準である。
さらに太陽光・風力・廃棄物発電の活用やLED照明による節電効果などを加えると、CO2の削減率は40%程度まで拡大できる可能性がある。このほかにもエネルギーコストを10%削減できるなど、開発地区に参入する事業者のメリットは大きい(図9)。同時に建設工事や商業施設の開業を通じて地域に投資を呼び込み、新たな雇用を創出する効果も見込める。
海外ではイギリスやドイツで自治体が中心になって地域のエネルギー供給に取り組む動きが活発だ。国内でも自治体が新電力を設立して、地域の再生可能エネルギーを生かした電力の地産地消を推進する事例が広がり始めている。今のところ沖縄県では新電力の参入が他の地域よりも少ない。浦添市のスマートシティは沖縄に適した新しいエネルギー供給システムのモデルケースとして期待がかかる。
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