直接アンモニアと燃料電池で発電、CO2フリー発電の新手法へ期待:蓄電・発電機器
水素エネルギーの拡大に向けて、燃料電池の研究開発が進んでいる。京都大学などの研究開発チームは、「固体酸化物形燃料電池(SOFC)」で水素の代わりにアンモニアを直接利用し、1kW(キロワット)の発電に成功した。発電しても水と窒素しか排出せず、有害物質や温暖化ガスの発生を伴わない発電が、実用規模まで拡大できる可能性を示す結果だという。
再生可能エネルギーなどを利用して製造した水素を、低コストに貯蔵・輸送するためのエネルギーキャリアとして注目されているアンモニア。1分子中に多くの水素を含み、20度、8.6気圧で液化するため、水素より扱いやすいというメリットがある。一般に水素のエネルギーキャリアとしてアンモニアを利用する場合、電力を必要とする場所で水素を取り出し、燃料電池などで発電する方法が一般的だ。
京都大学などの共同研究グループは、このアンモニアから水素を取り出すのではなく、“直接燃料”として用い、燃料電池で発電することに成功したと発表。ノリタケカンパニーリミテド、IHI、日本触媒、豊田自動織機、三井化学、トクヤマとの共同研究によるもので、「世界最大規模」(京都大学)となる1kW(キロワット)クラスでの発電に成功した。アンモニアがSOFCの燃料に適しており、有害物質や温暖化ガスの発生を伴わない発電が実用規模まで拡大できる可能性を示す結果だという。
アンモニアを直接燃料として利用した燃料電池は、「固体酸化物形燃料電池(SOFC)」。既に「エネファーム」などの家庭向けでは実用化されている燃料電池で、発電効率が高い点を特徴としている。SOFCの電解質として利用しているジルコニアの片面に取り付けた燃料極にアンモニアガスを直接供給し、反対側の空気極に空気を供給することで、両極の間に電力を発生させる仕組みだ。発電しても水と窒素しか排出しない。
研究グループは燃料電池単セルを30枚積層し、温度分布を最小として、アンモニアが各セルに均等に流れるよう工夫した1kW級のSOFCスタックを開発した。これに直接アンモニア燃料を供給して発電を行ったところ、純水素と比較しても同等レベルの良好な発電特性が確認できたという。また、燃料電池の直流発電効率は、1kWの規模でありながらSOFCの特徴である50%を超える効率を達成できた他、1000時間の連続運転にも成功した。
さらに異なる燃料供給方式として、アンモニアと空気の混合ガスをハニカム構造の触媒に供給して部分燃焼する触媒と、「オートサーマル反応器」を開発した。この反応器は130秒間で500℃の出口ガス温度を達成でき、これを利用した燃料供給方式でも1kW級の発電に成功した。アンモニアの分解を行うには触媒層を加熱するため、一般に外部からの熱供給が必要で、一定の温度に達するまでの時間もかかる。研究グループはこのオートサーマル反応器を、外部加熱に頼らない高速起動の可能性を示す技術として期待できるとしている。
今後はアンモニアを直接利用する、出力1kW級のコンパクトな実証機を開発し、実証運転を行う計画だ。
なお、今回の研究は総合科学技術・イノベーション会議の「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)における「エネルギーキャリア」の一環で、科学技術振興機構の委託研究として実施された。
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