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0.5秒で水素を検知、触媒不要の超音波センサーを新開発:蓄電・発電機器
日清紡ホールディングスは、音速の変化からガス濃度を算出する「超音波式水素ガスセンサ」を開発したと発表した。高速検知と広い測定範囲を特長とする。
日清紡ホールディングスは2017年11月、超音波の伝わる速度(音速)の変化からガス濃度を算出する方式を採用し、水素ガスを素早く検知できる「超音波式水素ガスセンサ」を開発したと発表した。
水素社会の安全性を支えるには、水素ガスセンサが必要不可欠となっている。現在の主流は化学反応により水素を検知する方式だが、触媒の劣化などが課題とされてきた。今回、同社が開発した超音波式水素ガスセンサは、同社グループ会社の上田日本無線の超音波技術と、日本無線がレーダーが無線通信で培った信号処理技術を応用。ガス濃度によってガス中を伝わる音速が異なる現象を利用し、水素を検知する。
触媒を使用しないため、NOx、SOxなどの触媒毒(微量でも触媒劣化を引き起こす物質)の影響を受けないという。さらに0.5秒の検知速度、広範囲な濃度測定(0〜100%)、加熱ヒーター不使用のため高速起動が可能などの特長がある。
また、水素ガスだけではなく、ヘリウムガスや気化したガソリン、六フッ化硫黄(SF6)ガスなど、雰囲気ガスと比重差があるガスであれば検知することが可能だ。ヘリウムガスを用いた自動車部品や機械部品のリーク試験(気密性の確認)への応用も期待できるとする。
用途や仕様に応じて2018年度から順次テスト販売を開始する。今後はリーク検知から濃度測定まで幅広い市場に向けた用途開発も進めていく方針だ。
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