トヨタが挑むバイオマス活用、廃棄物を水素と再エネに:自然エネルギー
トヨタは北米で、家畜の排せつ物や汚泥を利用した発電および水素供給事業に取り組むと発表した。発電した電力は北米拠点の電力に、水素は実証中の商用燃料電池トラックなどに供給し、エネルギーの地産地消を図る。
トヨタ自動車(以下、トヨタ)が、廃棄物系バイオマスを活用した発電および水素供給事業に乗り出した。同社の北米事業体であるToyota Motor North America(以下、TMNA)が、燃料電池発電事業を手がける米FuelCell Energy社と共同で、カリフォルニア州ロングビーチ港に、水素製造システム、燃料電池(FC)を利用した発電所、水素ステーションを併設した施設「Tri-Gen(トライジェン)」を建設すると発表。建設は2018年より開始し、2020年頃の稼働開始を計画している。
トライジェンはカリフォルニア州の畜産場の家畜排せつ物や、汚泥などの廃棄物系バイオマスから水素を取り出し、「溶融炭酸塩型燃料電池」を用いて発電を行う。燃料電池による発電で排出される水も含め、再生可能エネルギーから水素・電気・水を生み出す仕組みとなっている。
トライジェンは、これまでFuelCell Energy社が、米国エネルギー省、カリフォルニア州大気資源局(CARB)、同州の南部沿岸大気品質管理区(AQMD)などの公的機関や、核となる燃料電池関連技術の研究を行うカリフォルニア大学アーバイン校と共同で実現に向けた取り組みを進めてきた。今回新たにトヨタとFuelCell Energy社が協力することで、トライジェンの商用化に向け、水素・電気・水を効率的に利用する仕組みの確立を目指す。トヨタは燃料電池技術の応用拡大や、水素インフラ拡充を推進するとともに、港湾エリアの大気改善に取り組むカリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)やCARB、AQMDなどの環境改善目標達成にも貢献していく狙い。
トライジェンは、1日当たり約2.35MWhの発電量を見込んでいる。これは、米国における一般家庭約2350世帯分の1日のエネルギー消費量に相当。製造する水素約1.2トンは、燃料電池自動車(FCV)約1500を1日走行させられる水素量になるという。電力の一部と水は、北米でトヨタの物流事業を担うToyota Logistics Serviceのロングビーチ拠点に供給していく。これにより、同拠点は北米で再生可能エネルギーの電力のみを使用するトヨタ初の施設となるという。
製造した併設する水素ステーションなどを通じて、日本からロングビーチ港に輸送される新車配送前の燃料電池自動車「MIRAI」や、2017年10月からトヨタが同港湾エリアで実証実験を進めている大型の商用燃料電池トラックなどの燃料として利用していく。
現在、カリフォルニア州では合計31基の水素ステーションが稼働している。トヨタは、2017年9月にシェル、Hondaとともに同州北部への水素ステーション7か所の新設を発表している。今後もエネルギー企業や公的機関と協力して、水素ステーション網の拡充に取り組んでいく方針だ。
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