佐賀県で起きた風車発電の火災、原因は変圧器部品の腐食か:自然エネルギー(2/2 ページ)
2017年夏に佐賀県唐津市の「串崎風力発電所」で起きた火災事故について、JFEエンジニアリングが調査報告書をまとめた。原因は電蝕(しょく)による変圧器内の部品の腐食と見ているという。
アルミバーはなぜ燃えたか、原因と対策は?
ヒューズと接触する下部アルミバーの組織観察を実施したところ、表面積の92%に0.1〜1mmの腐食が点在していた。これは銅製と異なる材料でできているヒューズと、アルミバーの間で、異種金属による電蝕が引き起こした腐食という。下部アルミバーでこうした腐食が発生していたことから、同ヒューズと溶融した上部アルミバーの間にも、同等の腐食が起きていたと推定した。
この腐食が火災を引き起こすまでの過程は、以下のように推定している。ナセルの振動によってアルミバーの固定ボトルに緩みが発生し、ヒューズとアルミバーの間にギャップが発生し、接触面積が減少する。これにより局所的に大電流が流れ、6000℃以上のアークが発生。高温により溶融したアルミと銅が周囲に飛散し、周辺物が発火したという流れだ。現地で実機視察を行った風車メーカーのGamesa社も、同様の見解だったという。
ヒューズとアルミバーの間に発生した腐食を、運用面で防ぐ手立てはなかったのか。JFEエンジニアリングでは運用上の要因として、以下の理由が間接的に影響を与えた可能性があるとしている。
1つ目が2007年に「該当ヒューズ接続バーの有償材質変更を推奨」の連絡をGamesa社より受けたが、推奨であり必須でないこと、トランスを取り外して工場へ送って改造する必要があり、費用が高額であることから、交換に踏み切れなかったとこと。2つ目が原因となった部分は、ヒューズ交換時のみの点検で、有償交換未実施の判断後も点検回数を増やすなどの予防保全が不十分だったことである。さらに、風車運転データの記録用PCが火災発生の10日前に故障し、部品手配中ではあったものの、データを記録できない状況で運転を継続していたことも影響した可能性があるとしている。
今後の対策は、技術・運用の両面で実施する計画だ。技術面については、ヒューズ接続バーの材質をアルミから銅に変更し、ヒューズと直接接触しないアルミと銅の固定箇所にはクラッド材(アルミ−銅)を挿入。これにより電蝕の発生を防ぐ狙いだ。運用上の対策では、メーカー有償交換推奨時の対応改善、自主点検項目の追加、風車の運転データが記録できない場合には、「運転を停止した上で速やかに復旧を行う」など、運転条件の再徹底を行うとした。
串崎風力発電所の今後については、Gamesa社製の同型機種を使用した事業継続、「再生可能エネルギーの固定買取価格制度(FIT)」を新規取得して事業を再立ち上げ、事業撤退など、あらゆる可能性を検討し、2017年度末までに方針を決める計画だ。
関連記事
- 風力発電の天敵、落雷の検知をより高精度に
日本で風力発電設備を運営していく上で、避けられないのが落雷対策だ。ブレード破損や火災などにつながる可能性もある。NEDOはこうした落雷を検知する装置の高度化を目指し、評価技術の開発に着手する。 - 人工島が1億人を救う、未来の風力発電
洋上風力発電を爆発的に拡大するプロジェクトが明らかになった。オランダ、デンマーク、ドイツの送電系統運用者が手を結び、北海の中央に人工島を建設。約1万基の風力発電タービンと接続し、周辺6カ国に電力を供給する。なぜ人工島が必要なのか、コスト高にはならないのか、プロジェクトの内容を紹介する。 - 中部電力の風力発電所の破損原因が判明、自動停止装置を導入
中部電力の「御前崎風力発電所」(静岡県御前崎市)で、2016年3月に発生したブレード破損の原因が判明した。当日未明に発生した落雷で破損し、その後も風車の運転が続いたため破片が飛散した。中部電力では設備への落雷を検知した場合に自動的に運転を停止する装置を導入するなど、安全対策を進める。 - 落雷が原因か、福井と北海道で風力発電所の事故が連続
風力発電所の事故が止まらない。12月1日(日)に福井県の「国見岳風力発電所」で火災が発生したのに続き、5日(木)には北海道の「オロロン風力発電所」でも風車の羽根などが落下する事故が起きた。原因を調査中だが、2件とも落雷による可能性がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.