サトウキビと燃料電池で発電、エンジンの2倍の発電効率:自然エネルギー
九州大学などの共同研究グループはベトナムのエビ養殖上に、サトウキビなどの搾りかすから製造したバイオガスと燃料電池で発電を行う実証プラントを建設。発電効率53%を記録した。
九州大学水素エネルギー国際研究センター(以下、九州大学)は、ベトナムの研究機関や日本企業などと共同で、ベトナム・メコンデルタのエビ養殖場内に、地域の有機性廃棄物を資源として利用するエネルギー循環システムの実証サイトを建設したと発表した。サトウキビなどの搾りかすからつくるバイオガスと、燃料電池で発電が行えるシステムだという。
九州大学とバイオマス関連技術の開発を手掛ける明和工業(金沢市)は、ベトナムなどで手に入りやすいサトウキビやココナッツの搾りかすといった、有機性廃棄物のバイオガス化に着目。さらに、バイオガス化するために必要な有機性廃棄物を分解する菌の供給源として、エビなどの養殖池にある汚泥が活用できることを見いだした。実際に有機性廃棄物と養殖池の汚泥を投入するだけで、加温・保温を行わずに、発電用の燃料として利用できるメタンと二酸化炭素の混合を生成するシステムを構築し、運転に成功した。
このバイオガスは実証サイト内に設置した、九州大学とマグネクス(東京都立川市)共同開発した1kW級のSOFC(固体酸化物形燃料電池)に供給し、2018年1月から発電実証を行った。その結果、発電効率53%を記録した。九州大学は「この発電効率はエンジン発電機の倍に達するもので、燃料電池の用途拡大と地球規模の普及が期待される」としている。
なお、実証サイトで発電した電力は、中山鉄工所(佐賀県武雄市)が構築した電力供給システムにより、ダイセン・メンブレン・システムズ(姫路市)が導入する高効率曝気(ばっき)装置(超微細気泡散気装置)に供給される。曝気装置とは、エビの養殖池に酸素を供給するために空気を送り込む装置のこと。この装置に有機廃棄物由来の電力を供給し、エビ養殖の大幅な省エネ化に貢献するとしている。
なお、このプロジェクトは科学技術振興機構(JST)と国際協力機構(JICA)が共同で実施する「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)」の支援のもと実施した。
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