SOFCを実環境で運用、日立造船が発電効率52%を達成:蓄電・発電機器
日立造船は大阪市で実施した実環境下における固体酸化物形燃料電池(SOFC)の実証試験で、業界トップクラスの発電効率52%を達成したと発表した。
日立造船は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業で実施した、実負荷環境における固体酸化物形燃料電池(SOFC)の運用実証で、業界トップクラスとなる発電効率52%を達成したと発表した。
NEDOは、燃料電池の普及促進・市場拡大を図るために、業務・産業用燃料電池システムの実用化に向けた取り組みを進めている。その一環としてNEDO事業助成先の日立造船が開発した業務・産業用固体酸化物形燃料電池(SOFC)発電装置を、大阪市建設局管理施設である「咲くやこの花館」の設備棟前に設置し、2018年1月26日から実証実験を開始。その結果、業界トップクラスとなる発電効率が52%超(モノジェネレーション実証)をこのほど達成した。今回の実証実験で得られたこの効率は、発電に必要な補機動力を加味したAC送電端効率だという。
今回の実証装置は、メタンを主成分とする都市ガスを改質して得た水素を燃料とした小型分散型電源(定格出力20kW級)でエネルギー効率が高く、省エネルギー性に優れたシステムであり、低騒音・低振動・CO2排出量削減の面で高い環境性が期待される。本体寸法は幅2.2m×長さ4.3m×高さ2.8m(換気フード、排気管除く)で、今後、実負荷環境下で耐久性評価に必要な4000時間の連続運転を行い、同装置の安全性や信頼性の評価、および設備導入によるメリットを確認する予定だ。
実証実験は、日立造船と大阪市が、先進的な水素プロジェクトの創出をめざす大阪府および大阪市の共同の取り組みである「H2Osakaビジョン推進会議」に参画して進めている。両自治体は燃料電池を分散電源として導入し、将来のエネルギーの有効利用手段として、必要な製品と位置付けている。咲くやこの花館での実証実験は、今回のNEDO事業で、大阪産業技術研究所に続き、2サイト目の実証事業となる。
日立造船は、業務・産業用固体酸化物形燃料電池(SOFC)発電装置について、市場規模・採算性を考慮し、20〜数百kWまでの食品スーパー、コンビニ、オフィスビル、集合住宅などを対象とした2018年度内の市場導入を目標に開発を進めている。また、小型化、分割搬入可能な形状構造化、および災害時の防災電源化に向けて開発実証中だ。
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