大和ハウスの水力発電所が完成、発電した電力は自社の電力小売事業に:自然エネルギー
大和ハウス工業が岐阜県飛騨市で建設を進めてきた水力発電所が完成。発電した電力は同社が全量を買い取り、法人企業に販売する。
大和ハウス工業、シグマパワーホールディングス(東京都港区)および坂本土木(岐阜県飛騨市)の3社は、DTS飛騨水力発電(岐阜県飛騨市)を2014年12月に立ち上げ、2015年4月から飛騨市宮川町で「菅沼水力発電所」の建設工事を進めてきた。その「菅沼第一水力発電所」が2017年10月に完成したのに続き、2018年10月11日に発電「菅沼第二水力発電所」が、同日から営業運転を開始した。
大和ハウスグループでは、大和ハウス工業の創業100周年にあたる2055年を見据えて、2016年に環境長期ビジョン「Challenge ZERO 2055」を策定し、このビジョンの実現に向け、中期経営計画の対象期間にあわせて、3カ年ごとに「エンドレスグリーンプログラム」として具体的な目標と計画を策定し、環境活動を推進している。
現在、2030年までに事業活動における購入電力量に相当する再生可能エネルギーによる発電を目指し、自社施設・遊休地等への風力発電・太陽光発電システムの導入を進めている。
そうした中で、大和ハウス工業は2014年4月から、発電機を製造販売する東芝の子会社、シグマパワーホールディングスと小水力発電所の建設実績が豊富な坂本土木とともに水力発電事業を検討し、大和ハウス工業としては初となる水力発電所の開発を進めてきた。
菅沼水力発電所は、一級河川神通川水系宮川の菅沼谷支流の標高約1000メートルに位置する。冬季は降雪量が多い豪雪地帯のため、年間を通じて豊富な雪どけ水に恵まれているエリアで、発電所の用地は、DTS飛騨水力発電が土地所有者より賃借し、その山林内に建設した。総事業費は29億円。
発電した電力は、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」を活用し、2017年11月から20年間、大和ハウス工業が全電力をPPSとして全量を買い取り、電力小売事業の電力として法人企業に販売する。予定発電量は年間約1万2060MWh(メガワット時)で、家庭の一世帯当たりの全消費電力量を年間4432kWh(キロワット時)とした場合、約2700世帯分の電力量に相当する。これによるCO2削減量は年間約7000トンを見込む。
開発にあたっては、宮川町菅沼周辺の住民の協力を得て事業化に至ったという。また、環境面では、「奥飛騨数河流葉(おくひだすごうながれ)県立自然公園」の自然豊かな場所に位置しているため、水力発電所の建設に際して、発電所・鉄管路・沈砂池などの施設をなるべく林道近傍に設置し、最小限の樹木伐採や造成に留めた。
さらに、鉄塔や電柱などの人工構造物が自然の景観を損なわないよう各水力発電所間、水力発電所と変電所間の送電設備のほとんどを地下埋設で施工した。風雪に耐えることができ、暴風などによる災害にも強い送電設備となったため、24時間電力を供給することが可能だとする。
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