有機薄膜太陽電池の実用化へ前進、励起状態が長寿命な新材料の開発に成功:太陽光
京都大学は薄膜化した際に励起状態が長寿命化する電子受容性材料を開発することに成功したと発表。次世代太陽電池として期待される有機薄膜太陽電池の実用化に大きく貢献する成果としている。
京都大学は2020年3月、薄膜化した際に励起状態が長寿命化する電子受容性材料を開発することに成功したと発表した。この材料を用いた有機薄膜太陽電池で10%程度の高いエネルギー変換効率を実現することにも成功し、有機薄膜太陽電池の実用化に大きく貢献する成果としている。
軽量かつ柔軟性があり、既存のシリコン結晶太陽電池より低コストに製造できる有機薄膜太陽電池は、太陽光発電の用途を広げる次世代太陽電池として期待されている。同電池の発電層では、太陽光のエネルギーを用いてプラスとマイナスの電荷を発生させている。多くの電荷を発生するためには、電子受容性材料が効率よく太陽光エネルギーを吸収し、それによりできる励起状態が長い寿命を有することが望ましいとされる。だが、太陽光エネルギーを効率よく吸収するためには、電子受容性材料のバンドギャップが小さい必要があり、一般的にバンドギャップが小さい材料は、励起状態の寿命が短くなるという課題(エネルギーバンドギャップ則)があった。
今回、京都大学の研究グループはこの課題の解決に向け、電子受容性材料の分子間相互作用の制御に着目。電子受容材料に対し、ベンゼン環やピリジン環が二次元平面上につながった構造を組み込み、分子間相互作用を制御することで、バンドギャップが小さくても励起状態が長く続く材料を作り出すことに成功した。励起状態の寿命は従来の50倍に相当し、これを用いた有機薄膜太陽電池では、変換効率9.92%を実現できたという。
従来の有機薄膜太陽電池では、発電層において励起状態の長寿命化のために、電子受容材料と電子供与材料をナノメートルレベルで混合する必要があり、これが実用化の壁となっていた。だが、今回開発した材料を用のように励起状態を長寿命化できればナノメートルレベルでの混合が不要になるため、有機薄膜太陽電池の実用化を大きく後押しできるとしている。
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