トヨタとホンダが協働する「電気のバケツリレー」とは?:クルマの新たな活用法(3/3 ページ)
トヨタとホンダが、両社製品を組み合わせた移動式発電・給電システムを実証。FCバス(燃料電池バス)の水素で電気をつくり、ポータブルバッテリーに充電して、分散避難する被災者の元に届けようとする試みだ。
「電気のバケツリレー」で分散避難をサポート
この取り組みのコンセプトとなっているのが、「電気のバケツリレー」という発想だ。電気のもととなる水素をFCバスで現地に運び、FCバスから取り出した電気をたくさんの蓄電池に分けて、必要とされる場所までリレーする。両社はこれを、重厚長大なインフラの欠陥を補完する、「移動式マイクログリッド」と位置づける。
コロナ禍の中にあって、災害時の避難の在り方も変わってきた。避難所の“密”を避けるために、分散避難や在宅避難というあり方が標準になろうとしている。その意味でも、電気のバケツリレーにより、被災地のあちこちに電気を運ぶことができるMoving e には、大きな期待が寄せられるところだ。
クルマから電気を取り出すことは電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)でも可能だが、Moving eほどのスケールで電力供給システムを構築している例はない。この日、説明にあたったトヨタの燃料電池開発者は、「災害時を想定し、さまざまなエネルギーを利用できる体制を構築することが大切。広域で停電していたらEVへの充電は難しいし、ガソリンスタンドにトラブルがあればガソリンも使えない。エネルギーの多様性を持つことに価値がある」と話す。
さらに、トヨタとホンダは、「Moving eは災害時だけでなく、平時にもイベントなどで日常的に活用できる“フェーズフリー”のシステム」であるとアピールする。いざというときに「使い方が分からない」などということがないよう平時にも活用し、平時と非常時という2つのフェーズをフリーにすることを提唱する(平時活用・有事利用)。両社としては、導入の間口を広げることで、コスト低減にもつなげていきたい考えだ。
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