脱炭素技術を顧客と「協創」、日立がエネマネ実証環境を構築:自然エネルギー(2/2 ページ)
日立製作所(日立)が脱炭素関連技術を駆使したエネルギーマネジメントシステムの実証環境を構築し、運用を開始した。顧客とのオープンな協創を通して、社会課題を解決する環境イノベーションの創出を目指す。
再エネの利用を「証明」、CO2削減と電力コスト削減を両立
日立は、建物や設備あるいはサービスごとに、再生可能エネルギー由来の電力で稼働していることをデジタル技術を用いて見える化し、「Powered by Renewable Energy 」として証明するシステムを開発し、2021年2月より中央研究所内で運用している。脱炭素化への取り組みが求められる企業に対しては、成果の見える化による環境意識の向上や、環境価値に訴求した製品・サービスの提供を支援するシステムともなっている。そこにはスマートメーターとブロックチェーン技術が活用されており、個々の建物や設備・サービス単位で、再生可能エネルギーがどれだけ使用されているかが明示される。この証明システムにより、太陽光や風力など再生可能エネルギーそのものの価値およびCO2排出削減という2つの環境価値を、市場や需要家間で取引することも可能となる。
なお、同エネルギーマネジメントシステムの効果を同社国分寺サイトで2020年度に検証した結果、2018年度との比較で、CO2排出量を20%削減しながら、エネルギーコストを30%削減できることが確認されたとのこと。また、「電力量インバランスの抑制制度は一般的に10〜20%の水準だが、本システムでは2%以下と高精度であり、電力制御の命令に対してもエネルギーマネジメントシステムが約30分での応答を可能とし、エネルギー需要家の期待に応えられることを確認した」という。
「2030年のエネルギー社会像」を現実のものとするために
今回発表されたエネルギーマネジメントシステム実証環境は、2030年のエネルギー社会像を見据えたものだ。日立では、2030年のエネルギー社会のポイントを次の3つに整理する。
- 供給者の脱炭素化が進展……非化石エネルギーの活用が増加する
- 需要家が供給者になる……エネルギー消費者が自ら発電・蓄電・売電を行う。卸電力の売買も活発化する
- 多拠点連携が加速……分散化が進み、エネルギーマネジメントシステムを介した連携が加速する
2030年に向かって分散型エネルギー社会への移行が進み、電力供給の流れは双方向型となり、事業形態については自己託送やPPAが大きく伸びると予見する。また、技術的な課題として、発電・需要予測やインバランス抑制の高度化が求められるとする。
こうした認識のもと、協創の森では、エネルギーマネジメント技術を軸に、省エネ性・経済性を担保したゼロエミッション化の研究が進められている。今後はさらに、小規模な電力ネットワーク内の再生可能エネルギーから製造したローカル水素、バイオエネルギー、5G、エネルギー託送技術による多拠点連携などを組み込むことで、実証環境をさらに進化させ、完全ゼロエミッション化や持続可能な社会の実現に貢献していく方針だ。
協創の森は、中央研究所内に2019年、顧客やパートナーとのオープンな協創によりイノベーションの創出を加速する研究開発拠点として開設された。ソリューションのプロトタイピングと検証を実施し、社会実装に向けた技術・サービスの集中開発を行う「協創棟」を中核とする。これまで世界中から顧客やパートナーを招き、社会課題の解決に向けたビジョンを共有するとともに、新たな事業機会の探求も行ってきた。エネルギーマネジメントシステム実証環境は、ここに構築されたものであり、脱炭素という世界的な課題の解決に向けて大きな役割が期待されている。
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