再エネ普及のカギとなる「需給調整市場」、開設から1年で分かった課題と今後の対策:エネルギー管理(3/3 ページ)
再生可能エネルギーなどの出力変動型電源の導入拡大に伴い、電力需給の「調整力」の取り引きに注目が集まっている。2021年4月には調整力を取り引きする「需給調整市場」がスタート。しかし市場開設から1年が経過し、課題も顕在化してきた。本稿では現在政府の委員会で議論されている、需給調整市場の今後の制度設計の方向性について紹介する。
ルール変更は2025年度から
これらの市場ルール見直しによる効果量(応札量の増加+募集量の低減)は、ブロック時間見直しで11,000MW/日、下げ代不足対応で10,000MW/日、応動時間で1000MW/日、と試算されている。
ただしいずれもシステム改修が必要であるため、「下げ代不足対応」は2023年度、「ブロック時間見直し」および「応動時間の見直し」は2025年度から適用開始予定である。
三次②における複数エリアでの共同調達
三次②では、複数エリアで共同調達するスキームが2022年4月から導入されている。
エリアによって調整力(最大)が必要となるタイミングは異なるため、エリア間の不等時性を考慮することにより、複数エリアの合成募集量は、各エリアの単純合計量よりも小さくすることが可能となる。
ただし、地域間連系線の空き容量が不足する場合には実質的に共同調達できないため、空き容量が残存している蓋然性が高い区画として、現在は「東ブロック:東北・東京エリア」、「中西ブロック:北陸・関西・中国・四国・九州」の2つが設定されている。
広域機関によれば、三次②を共同調達することによる年間調達量の低減効果(2022年度)は、東ブロックで21%減、中西ブロックで8%減、合計で29億ΔkWhに達すると試算されている。
また気象予測精度を上げることにより、三次②の必要量を低減させることが可能となる。
2021年度には5つのエリアにおいて、複数の気象モデルを活用した気象予測を行うことにより、従来モデルと比べ、三次②調達量が8%程度低減された。
2022年度には、複数気象モデルによる低減効果は34億ΔkWhに上ると試算されている。よって共同調達と複数気象モデル双方の低減効果により、2022年度の三次②調達量は約219億ΔkWhに抑制されると見込まれている。
三次②における調達費用の抑制が課題に
三次②はFIT電源の予測誤差に対処するための調整力であることから、一般送配電事業者による三次②の調達費用は、FIT交付金により賄われることとなっている。
2021年度の三次②調達費用1200億円は、FITの買取費用3兆8434億円(2021年度)と比べても約3%に相当する金額であり、一般送配電事業者は三次②調達費用をさらに抑制することが求められる。
このため、気象予測の精度向上等により三次②必要量を低減させるインセンティブを一般送配電事業者に付与するため、自社の過去4年のΔkW最小確保率をもとに必要量を補正することとされた。
この結果、2022年度の三次②必要量(補正後)は215億ΔkW・hとされ、平均単価3.9円/ΔkW・hにより、FIT交付金案は約803億円と算定された。
現時点の三次②リソースの多くはLNG火力と揚水発電であり、デマンドレスポンス(DR)やVPP、蓄電池の構成比は1%未満に留まっている。
今後は変動性再エネ電源自身が調整力を供出するなど、多様なリソースを活用することにより、単価面での低減も進むことが期待される。
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