2022年3月の電力危機を検証、実際の節電行動の振り返りと今後の対策:エネルギー管理(5/5 ページ)
2022年3月22日に関東エリアを中心に発生した大規模停電のリスク。資源エネルギー庁の「電力・ガス基本政策小委員会」第46回会合では、昨冬のデマンドレスポンス(DR)の効果や今後の需要側対策の深掘りなどが検討された。
電気使用制限令は「最も厳しいレベル」を想定した準備へ
過去、電力需給が厳しいと見込まれた場合、需給逼迫の程度に応じて表2のような需要対策を講じてきている。
電力・ガス基本政策小委員会では、この最も厳しいレベル3の「電気使用制限令」の発令についても、事前準備を進めることとしている。
電気使用制限令とは電気事業法に基づく「命令」であり、1964年の制定後、1974年石油危機時と2011年の東日本大震災後に発令の実績がある。
電気使用制限令では契約kWが500kW以上の大口需要家を対象に、地域・期間・時間帯を指定した上で使用最大電力(kW)または電気使用量(kWh)を制限することとなる。また医療施設や上下水道など、社会インフラとなる一部の需要設備については、対象からの除外や緩和規定が設けられている。
このように使用制限令の発動に当たっては、対象需要家への通知・連絡体制の構築や省令の整備など、国および事業者において、事前に調整すべき事項が数多く存在する。
2022年度冬季は、東京エリアで予備率がマイナスになるなど、極めて厳しい需給見通しであり、これは表2の「レベル2」数値目標付きの節電要請が必要となり得る水準である。
東日本大震災の2011年と比べると、電力小売全面自由化や新型コロナウイルスによるテレワークの普及など、社会状況が大きく異なっている。
大規模停電の回避を大前提としつつ、節電の負担が一部需要家に偏ることの無きよう、賢く幅広い節電が促されることが期待される。
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