三菱商事系が「圧勝」の洋上風力第1ラウンド、今後の入札は評価ルールを変更へ:法制度・規制(4/4 ページ)
三菱商事系のコンソーシアムが全ての公募海域の事業者に選定され、大きな注目を集めた洋上風力発電の第1回入札。現在、事業者の選定方法に関する見直しが進行中だ。本稿では現在検討されている新たな選定・評価方法の動向について解説する。
複数区域の同時公募には落札制限の導入も
第1ラウンドでは三菱商事ESコンソーシアムが3つの区域すべてを落札したため、多様なサプライチェーンの形成に対する不安が一部で示されている。
このため多くの事業者が公募に参画することによる健全な競争を促す観点から、同時開催公募においては、落札数(落札容量)を制限することが提案されている。
ただし制限を設ける場合であっても、効率的なサプライチェーン形成の阻害とならないよう一定の規模を確保することや、事業実現性と価格評価が著しく劣る事業者が選定されることがないような制度とする必要がある。具体的な落札制限規模としては、1GW(100万kW)という案が示されている。
具体的な割り当て方法は以下の表3の通りである。
まずは公募区域ごとに事業実現性と価格を評価する。従来(第1ラウンド)方式であれば、区域A〜Cいずれもコンソーシアムαが落札することとなる。
これに対して新方式では、次点の公募参加者との点差が大きな区域から順番に、1GWとなるまでコンソーシアムαに割り当てる。区域Cは次点者がいないので、仮想的な得点ゼロとの点差が215点となり、まず0.3GWが割り当てられる。
次に、次点者との点差が大きい(30点差)区域Aの0.7GWが割り当てられる。この時点でコンソーシアムαは1GWに達するため、これ以上の落札は出来ない。よって区域Bは次点者であるコンソーシアムβが落札することとなる。
また公募においてこのような上限値を設ける場合、談合を防ぐという視点も不可欠である。このため複数区域に応札する場合は、公募占用計画のコンソーシアム代表企業は全て同一企業とすることや、コンソーシアム構成員は同時開催の別区域公募に係る応札において、他のコンソーシアムの構成員となってはならないことが求められる。
事業者選定時の情報公開範囲を拡大
第1ラウンドでは非選定事業者名は非公表であるなど、情報公開が限定的であったことが、憶測に基づいた不正確な情報が流布された一因であると考えられる。このため今後の公募においては、透明性の向上や地元理解を図るため、以下の内容を公表することに変更した。
ア)選定事業者/非選定事業者いずれも公表する情報
- 事業者名、構成員名
- 事業計画概要(発電設備出力、基数、風車機種、運転開始予定時期)
- 評価点(供給価格点、事業実現性評価点)および事業実現性評価点の内訳及び講評
また選定事業者については、ア)に加えて、事業計画の要旨として以下の情報を公表する。
- 供給価格
- 事業実施体制
- 工事計画(スケジュール、利用する港湾名、港湾利用スケジュール)
- サプライチェーン形成計画の概要
- 地域共生策の概要、地域・国内経済波及効果
洋上風力発電は2030年までに10GW(1000万kW)、2040年までに30〜45GWの案件を形成することが政府目標として示されるなど、大量導入と大幅なコストダウンが期待される再エネ電源である。
公募評価方法の見直しは、事業者の参入意欲を促進する方向で進められることを期待したい。
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